軍国主義日本に対する戦勝記念日であり、第二次世界大戦終結の日――。ロシアは今年7月、一方的に9月3日を「対日戦勝記念日」と制定した。ウクライナ戦争をきっかけに、関係が悪化している日本を牽制する動きとみられる。第二次世界大戦の終戦直前に日ソ中立条約を無視して突如、参戦してきた旧ソ連軍は1945年9月5日までに、日本固有の領土である北方領土の占領を終えた。 その北方領土では、ウクライナ戦争前まで夏から初秋にかけて日露の民間交流が盛んであった。しかし現在、領土返還交渉やビザなし交流は中断。元島民による墓参もストップしている。筆者は過去に3度、北方領土を取材した。本稿では、当時の現地の状況とともに墓参の様子を紹介したい。 (鵜飼 秀徳:作家、正覚寺住職、大正大学招聘教授) 日本人集落の面影は消え去ったが… 私が初めて北方領土の択捉島を訪れたのは2012(平成24)年のことであった。ビザなし交流団員