デマや陰謀論、疑似科学、メディアが報じないニュースの「裏側」、巨大組織に隠蔽された不都合な真実・・・現在、かくも多様な「真実」が並行する世界をしてポスト・ファクトなどと呼んだりしますね。各々の信じる現実が自由市場経済的にその存在を許されているとき、ひとつの必然的帰結として「わかりやすい言説」が支持され、比較的複雑で、一筋縄ではいかないような現実認識のほうが淘汰されるということが起こり得ます。 「わかりやすい言説」の数々を生む欲望のひとつには、あるひとつの言説が、全世界中の不都合をたったひとつの法則から無矛盾的に説明してくれれば「都合がよい」というものがあります。今回は、このような「わかりやすい言説」の組成を、「無矛盾性、万能性」への欲望からわかりやすく説明してみましょう。 1.思考のショートカットー「裏にある真実」の誘惑 さて、人間の思考について私たちが指摘できる大きな特徴のひとつは、それ