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ブックマーク / honz.jp (38)

  • 『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって - HONZ

    にブックカバーはつけない。これを長年の流儀としてきた。 通勤電車でを開くと、目の前に座る人の視線がきまって表紙に注がれる。との出会いは何がきっかけになるかわからない。中には電車でたまたま見かけて興味を持ち、を買う人だっているかもしれない。出版文化への貢献のためなら、喜んで歩く広告塔になろう。そう考えて、どんなであろうと(たとえ『性豪』や『鍵開けマニュアル』といっただろうと)顔色ひとつ変えず公衆の面前でを開いてきた。それがハードボイルドな俺の流儀だった。 だが、書を手にした時、初めてその覚悟が揺らいだ。 いや、覚悟が揺らぐなんてちょっとカッコつけ過ぎである。正直に言おう。気後れしてしまったのだ。臆病な犬のように尻尾を股の間に挟んで後ずさりしてしまったのだ。カバンに手を突っ込んだまま固まっている俺を、目の前の女が不安そうに見上げた。銃を持っているとでも思われたのかもしれない。怯

    『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって - HONZ
  • 『ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち』大志を抱かない生き方は許容されるか? - HONZ

    書は、大人たちの「夢を持て」「大志を抱け」という温かなアドバイスが数多の若者たちを苦しめている事実を剔出する一冊である。なんだそりゃ、軟弱すぎる、大袈裟だ、そんなわけない……などと憤る方は多いだろう。だが、大学の事務職員として学生のキャリア支援と講演活動を精力的に行ってきた著者は、一万人以上の若者の生の声を聞き、もはや看過できない域に達していると痛感する。今の時代、将来の夢の話はただの嫌がらせになるリスクのほうが高いのだ。 とはいえ、あらかじめ断っておくと、このの目的は犯人の糾弾ではない。なぜ夢の話がハラスメント化したのか。第一、夢とは何か。夢の持てる状況とはどのように生じるのか。こうしたメカニズムを詳らかにした上で、多様な生き方を受け容れる社会とはどんなものか思案・思索していく内容となっている。 まずは現状認識から。将来の夢なんかない。やりたいことがよくわからない。自分のキャリアビジ

    『ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち』大志を抱かない生き方は許容されるか? - HONZ
    kenjiro_n
    kenjiro_n 2020/07/20
    ここで言う免除型の人生だったので査定のときに毎度しんどい思いをしていることを思い出さざるを得ない。ストレスのない筆致だということなので読んでみたい。
  • 医学界の「怪物」、その壮絶なドラマ『ゴッドドクター 徳田虎雄』 - HONZ

    徳田虎雄。その名を聞いたとき、どのようなイメージが思い浮かぶだろう。医療に風穴をあけた風雲児、潤沢な資金をバックにした金権政治家、あるいは、難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)と闘う患者だろうか。それは世代や立場によって大きく異なってくるに違いない。いや、そもそも若い人には、その名さえ知られていないかもしれない。 まったくの徒手空拳から、昭和48年、大阪の松原市に建設した徳田病院を皮切りに、徳洲会病院を全国に開院。「徳洲会事件」によりすでに経営者の座を追われたといえ、71の病院と約3万人の職員を擁し、グループ全体で4,200億円もの売上げを誇る、日最大にして世界屈指の病院グループの礎を築いたのが徳田虎雄だ。 その一代記であるこの、面白くないはずがない。まずは冒頭のシーンで度肝を抜かれる。医療界の話のはずなのに、山口組傘下のヤクザ-警察がいうところの暴力団-の「事始め」の儀式から始まるのだ

    医学界の「怪物」、その壮絶なドラマ『ゴッドドクター 徳田虎雄』 - HONZ
  • 皆ひとしく、その時に向かっている 『エンド・オブ・ライフ』 - HONZ

    何もない土曜日。我が家で最初に「行ってきます」を言ったのは、84歳の母だった。朝8時、迎えに来たデイサービスの車に車椅子のまま乗り込んでいった。そしてさっき、「お年玉でオモチャを買いたい」という息子と「友達の誕生日プレゼントを買いたい」という娘を連れて、が出ていった。そして、私は一人リビングに残された。 早速、昨日泣きながら読んだ書『エンド・オブ・ライフ』の素晴らしさを多くの人に伝えようと、パソコンを立ち上げた。当然だが、原稿というのはいずれ書き終える時がくる。そういうものだ。今回は、その最後の一文をどんな気持ちで書き終えるだろう。笑顔と拍手で終えられるだろうか。それは、今をどう生きるか(どう書くか)、にかかっている。 そう考えると、今この瞬間の中にも、生と死があることに気づく。このは終末医療を扱ったノンフィクションだが、私が書を全ての人にお薦めしたい理由はそこにある。ここに書かれ

    皆ひとしく、その時に向かっている 『エンド・オブ・ライフ』 - HONZ
  • 『あなたは、なぜ、つながれないのか ラポールと身体知 』 - HONZ

    2015年10月、池袋・某書店の人文書フロアで、私は立ち尽くしていた。棚に面出しで置かれた『あなたは、なぜ、つながれないのか』を前に、動けなくなっていたのだ。正直レジに持っていくには、少し勇気の要るだった。実際、その日カゴに入れていたは詩集ばかりで、書は当時の自分が手に取る系統のではなかった。 それでも、刊行当初から否応なく気にかかる一冊だった。タイトルが目に飛び込んでくる度、反射的に目をそらしたくなる自分がいた。『あなたは、なぜ、つながれないのか』。他者と打ち解けることができない自分の弱さを責められているような不安、弱さを突きつけられることへの恐れ、それでも「他者とつながりたい」という気持ちがせめぎ合い、整理できない感覚に陥った。 「人に壁を作ってるよね」と冗談交じりに指摘され、内心図星だった学生時代。「そんなコミュニケーションの仕方じゃダメだ」と非難され、反省する一方で、「当た

    『あなたは、なぜ、つながれないのか ラポールと身体知 』 - HONZ
  • 『人口減少社会のデザイン』「人口減少社会」に直面する日本に残された選択肢とは - HONZ

    厚生労働省は12月24日、2019年の人口動態統計の年間推計を発表し、それが大きなニュースになっている。2019年の日人の国内出生数は、最少だった2018年の91万8400人を下回り、前年比5.92%減の86万4千人となり、1899年の統計開始以来初めて90万人を下回った。出生数が死亡数を下回る人口の自然減も51万2千人と初めて50万人を超えて、2017年4月の国立社会保障・人口問題研究所の将来推計に比べると、人口減少ペースは2年も早まっている。 未来予測の中で最も確度が高いのが人口予測であるというのは、未来学者(フューチャリスト)のピーター・ドラッカーが以前から指摘していたことであり、人口の大幅な減少が今さら話題になるというのもおかしな話ではある。これだけ長期にわたる経済停滞が続き、社会がこれだけ若者と女性を痛めつければ、その結果がどうなるかは誰でも分かりそうなものだが、分かっていても

    『人口減少社会のデザイン』「人口減少社会」に直面する日本に残された選択肢とは - HONZ
  • 最近海外の人が増えたなあ。そんな人は『ふたつの日本』を。 - HONZ

    コンビニのレジの人、どこの国の人だろう? 技能実習生が失踪って、なぜそんなことに? 移民に関する政策ってどうなっている? 日に「暮らす」在留外国人はすでに263万人、日の人口の約2%だ。ただ、その内訳は思った以上に複雑だ。周りに外国人は増えていくのに、自分は対応できていないような。この、大きすぎてわからない問題をクリアに「見える」化してくれる、しなやかな一冊の登場だ。 「移民」を真っ向から丹念に書く著者の望月優大さんは、1985年生まれ。経歴が華やかで、東大で修士課程を終えた後、経済産業省、グーグル、スマートニュース、を経て独立し、現在は株式会社コモンセンスの代表をつとめる。 最近では「ニッポン複雑紀行」なるウェブマガジンで、その文章をご覧になった方もいるかもしれない。 これは「日の移民文化・移民事情を伝える」ことを目的とした、難民支援協会のウェブマガジンで、望月さんはライター兼編集

    最近海外の人が増えたなあ。そんな人は『ふたつの日本』を。 - HONZ
  • 『日本の「中国人」社会』在日中国人が映し出す 日本の課題と可能性 - HONZ

    73万人。日に住む中国人の数だ。鳥取県、島根県の人口よりも多く、高知県とほぼ同数というから驚きだ。横浜市には全校児童の約4割が中国籍の公立小学校もある。 日常的にも中国人と接する機会は増えている。コンビニエンスストアや居酒屋の店員の多くは中国人だ。 日の大企業が中国籍の大卒社員を積極的に採用し始めて久しい。繁華街でも店員と客の大半が中国人という料理店を目にするようになった。 このように日では急速に中国人社会が形成されているわけだが、彼らは果たしてどのような思いで日に来て生活し、生き抜こうとしているのだろうか。 書に登場する中国人の職業や来日した理由はさまざまだ。通販会社の社長から会社員、マッサージ師、行政書士、アニメの声優、大学生まで多岐にわたる。 ジャーナリストとして中国人コミュニティーと多くの接点を持つ著者は、丹念な取材で彼らの音を炙(あぶ)り出し、等身大の中国人を描き出す

    『日本の「中国人」社会』在日中国人が映し出す 日本の課題と可能性 - HONZ
  • 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』現代の「知の巨人」が問いかける人類の未来 - HONZ

    前作である『サピエンス全史』で著者ユヴァル・ノア・ハラリは、認知革命により、自らが生み出した虚構と共同主観を信じる能力を手にした、私たちホモ・サピエンスが、いかにして農業革命、科学革命を成し遂げ、現代に至ったかを、様々な哲学、宗教、そして最新の科学研究を駆使して論じ、さらに幸福という基準を軸にサピエンスの歴史を包括的に描き出した。 ハラリは『サピエンス全史』の最後で、サピエンスは科学の力により自らをアップグレードし、新たな人類へと移行する道を選ぶのではないかという大胆で、少し不気味な予想を立てている。もし、それが実現可能であるのならば、新しい人類が作り出す社会はどのようなものになるのか?そんな疑問に答える形で生み出されたのが、書『ホモ・デウス』である。 書では、サピエンスは飢饉、疫病、戦争という人類を常に掣肘してきた脅威を、概ね克服したという認識を私たちに示す。これら3つの事柄はこれか

    『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』現代の「知の巨人」が問いかける人類の未来 - HONZ
  • 『民主主義の死に方 二極化する政治が招く独裁への道』 民主主義が民主主義を殺す - HONZ

    世界各地の独裁政治を研究してきたハーバード大学教授である著者が、民主主義がどのように、そしてなぜ死ぬのかを追求する。著者はあらゆる場所、時代の民主主義が死んでしまった事例を紹介しながら、当たり前に享受している民主主義がいかに微妙なバランスのうえで成り立っているものなのかを教えてくれる。幅広いケースを考慮する書だが、議論のフォーカスはアメリカおよびトランプ現象に当てられいるので、日々伝えられるアメリカ政治の異常事態の意味がより良く理解できるようになるはずだ。米連邦最高裁判所判事にカバナーが選ばれたことがどれほどの意味を持つ事件なのかを思い知る。 民主主義が崩壊する瞬間といえば、銃を持った兵士や市民をなぎ倒そうとする戦車を思い浮かべるかもしれない。たしかに、アルゼンチン、ブラジル、ガーナやパキスタンのような冷戦時の民主主義崩壊の4分の3は、軍事力を用いたクーデターによってもたらされた。しかし

    『民主主義の死に方 二極化する政治が招く独裁への道』 民主主義が民主主義を殺す - HONZ
  • 『生存する意識──植物状態の患者と対話する』 グレイ・ゾーンに閉じ込められた意識と、それを発見し、それと意思疎通する科学 - HONZ

    『生存する意識──植物状態の患者と対話する』 グレイ・ゾーンに閉じ込められた意識と、それを発見し、それと意思疎通する科学 植物状態と診断されながらも、じつは意識がある人たち。そうと示すことがまったくできなくても、たしかな認識能力を持ち、どうしようもない孤立感や痛みを感じている人たち。そうした人たちが置かれている状況を想像し、悪夢とも思えるその可能性に身震いしてしまった経験が、おそらくあなたにもあるのではないだろうか。だが現在の科学は、その可能性を前にしてただ震えているばかりではない。誰かが現にそうした状況にあるかどうかは、なんと科学的に検証できるようになりつつあるのだ。 書の著者エイドリアン・オーウェンは、その科学を「グレイ・ゾーンの科学」と呼ぶ。グレイ・ゾーンとは、おもに植物状態と診断されている患者の、「物事を満足に認識できないが、認識能力を完全には失っていない」状態である。そしてオー

    『生存する意識──植物状態の患者と対話する』 グレイ・ゾーンに閉じ込められた意識と、それを発見し、それと意思疎通する科学 - HONZ
  • 【連載】『全国マン・チン分布考』第1回:京都の若い女性からの切実な願い - HONZ

    京都の若い女性からの切実な願い 1995年5月初旬のことです。ユニークな内容が書かれた一通の手書きの依頼文が、『探偵!ナイトスクープ』に寄せられました。そのころはまだパソコンが普及していませんでしたから、依頼は必ず、はがきか手紙で寄せられました。 手紙をくれたのは、京都市内に住む24歳の女子学生でした。地元京都で学生になる前に、東京で働いていた時期があったようです。この依頼はまさにこののテーマ、なんと「女陰」の名称の全国方言分布図を作成してほしいと求める内容だったのです。こんなお願いが、若い女性から、しかも大真面目な文章で寄せられてくるとは、夢にも思っていませんでした。 私たちに依頼文が届いたのは、1991年5月24日に「全国アホ・バカ分布図の完成」編を放送してから、ちょうど4年が経ったころでした。この放送をきっかけに、私が「アホ・バカ方言」の研究を仕事の合間に始め、『全国アホ・バカ分布

    【連載】『全国マン・チン分布考』第1回:京都の若い女性からの切実な願い - HONZ
  • 『GAFA 4騎士が創り変えた世界』GAFA以降のゲームのルールにどう立ち向かうのか - HONZ

    書『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は、GoogleApple、Facebook、AmazonGAFA)という巨大テクノロジー企業4社を、それぞれが地上の4分の1を支配し、剣、飢饉、悪疫、獣によって「地上の人間を殺す権威」を与えられた、ヨハネの黙示録に登場する四騎士になぞらえている。 そして、神にも擬せられるほどの力を持つようになったGAFAは、人類の生活とビジネスのルールを根から変えつつあり、これからも変え続けると予言するのである。 GAFAがどれだけ巨大かを示す一例として、GAFAIT企業の老舗であるMicrosoftを加えた5社の株式時価総額を見てみると、この書評を書いている8月24日現在、総額は4兆1,579億ドル(約461兆円)にも達している。 Alphabet (Google) 8,492億ドル(約94兆円) Apple 1兆440億ドル(約116

    『GAFA 4騎士が創り変えた世界』GAFA以降のゲームのルールにどう立ち向かうのか - HONZ
  • 『コンビニ外国人』身近だけどよく知らない、ではすまされない - HONZ

    もはや毎日のように顔を合わせている人たちについての話だ。地域によって差はあるものの、都市部のコンビニでは外国人スタッフの存在はすっかり当たり前になった。自宅の最寄りのコンビニともなると7割くらいが外国人店員という印象なのだが、その割に知っていることはあまりにも少ない。タイトルを見た瞬間、自然と手が伸びた。 中身はコンビニの話にとどまらない。コンビニ店員のほとんどを占める私費留学生を中心としながらも、技能実習生、その他の奨学生、さらには在留外国人全般にわたる幅広い視野で外国人労働者の置かれる状況がまとめられた1冊である。 近い将来変わる見込みがあるものの、現状は技能実習生がコンビニでバイトをすることは認められていない。コンビニで働く人外国人のほとんどは、日語学校や大学で学びながら原則「週28時間」の範囲で労働する、私費留学生だ。中国韓国・ベトナム・ネパール・スリランカ・ウズベキスタンなど

    『コンビニ外国人』身近だけどよく知らない、ではすまされない - HONZ
  • ダマされても憎めない『ananの嘘』 - HONZ

    雑誌はその時代のトレンド、社会の流れを掴むもの。だから1冊の雑誌の来歴をたどれば、自ずと、時代ごとの社会の変遷を読み取ることができる…。 そんな普段とは異なる「雑誌の楽しみ方」をみせてくれるのが書『ananの嘘』。創刊から45年を迎えた雑誌『anan』(以下、アンアン)の2000号に及ぶ誌面を、『負け犬の遠吠え』他の著者である酒井順子氏が分析した一冊である。 やけに過激なウーマンリブ時代のアンアン アンアンが創刊されたのは1970年。当時はまだ「ちょっと働いたら寿退社」という道が一般的だったものの、恋愛結婚する人の割合がお見合い結婚する人の割合を初めて上回り、「自由に恋愛できる時代」に突入したのが、この頃。同時に、ウーマンリブの潮流も世界的に生まれ、「女性はこうあるべき」という規範が大幅に揺らぎはじめていた。 そんな時代に誕生したアンアンは、やけに過激。おしゃれ有名人のヌードの家族写真を

    ダマされても憎めない『ananの嘘』 - HONZ
  • 数奇な運命をたどった本 『ある奴隷少女に起こった出来事』 - HONZ

    新潮文庫のラインナップに、新たな古典名作が加わった。しかし、『小公女』や『若草物語』のようなフィクションではない。著者自身が序文で「読者よ、わたしが語るこの物語は小説ではない」と言明している通り、「ある奴隷少女」人が奴隷制の現実をつづった世にも稀なる手記なのである。アメリカでは、すでに大ベストセラーになっているが、日でも長く読み継がれるになるに違いない。 内容に入る前に、書がたどった数奇な運命についてふれたい。書が刊行されたのは、1861年である。作中人物が存命だったため、「リンダ・ブレント」というペンネームで執筆され、一般的には、白人著者によるフィクションとみなされて読まれた。奴隷解放運動の集会などで細々と売られたが、次第に忘れ去られ、関係者の死とともに著者・ジェイコブズとのつながりも分からなくなっていった。 転機が訪れたのは、出版から126年を経た1987年。歴史学者がジェイ

    数奇な運命をたどった本 『ある奴隷少女に起こった出来事』 - HONZ
  • 『「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住みたくない街』だけど、行ってみたくなる街 - HONZ

    「絶対に○○してはいけない」というニュアンスの言い方には、言外に反対の意味が含まれることも多い。「絶対に笑ってはいけない」「絶対に電車の中で読んではいけない」といった枕詞の後には、大抵笑いが待ち受けているものだ。いわゆるフリという奴である。 しかし書の「住みたくない」は、どうも気と書いてマジと読ませるタイプのようである。吉祥寺、自由が丘、下北沢は「甘すぎて無理ゾーン」。豊洲、武蔵小杉、新浦安は「似非セレブすぎて無理ゾーン」。二子玉川、清澄白河は「意識高すぎて無理ゾーン」というから、もはや書の著者は一体どこに住んでいるのだろうかと問い質したくもなる。 著者は、触れられたくない街の「不都合な部分」にあえて首を突っ込んでいくことで定評のある「東京DEEP案内」というサイトの管理人。元々は大阪を中心に西成や生野区といったDEEPなスポットばかりを紹介する「大阪DEEP案内」を運営しており、2

    『「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住みたくない街』だけど、行ってみたくなる街 - HONZ
  • 『PC遠隔操作事件』警察、メディア、犯人、その誰もが踊らされた - HONZ

    事件ノンフィクションと呼ばれるジャンルの醍醐味が、存分に味わえる一冊だ。この事件の何に対して自分が釈然としない思いを抱いていたのか、その正体が嫌というほど見えてくる。その実像は、事件当時に見知っていた情報とは大きく異なる印象があった。 PC遠隔操作事件とは、2012年6月から9月にかけて14件もの殺害・爆破予告がなされた事件である。JAL便の爆破予告から、小学校の襲撃予告、はたまた有名子役や人気タレントグループ襲撃予告までとターゲットは幅広く、世間を震撼させた。 逮捕されたのは、IT関連会社社員で当時30歳の片山祐輔という一人の青年であった。書では、事件発生からの全過程を克明に記録し、事件の中からあぶり出された課題を、今あらためて検証しようと試みている。 書のスタンスが特徴的なのは、この事件当にこれほど騒がれるようなものであったのかという点から出発しているところだ。結局一連の殺害・

    『PC遠隔操作事件』警察、メディア、犯人、その誰もが踊らされた - HONZ
  • 『ヒットの崩壊』「PPAP」はヒットなのか? - HONZ

    ピコ太郎、RADWIMPS、宇多田、星野源… 「最近のヒット曲って何?」 そう聞かれて、すぐに答えを思い浮かべることのできる人は、どれだけいるだろうか? よくわからない、ピンとこないという人が多いのではないだろうか。 こういう書き出しで『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)ははじまります。心当たりのある「ヒット」曲、ありますか? AKB48、三代目 J Soul Brothers、嵐……あたりが筆頭でしょうか。実際、オリコン年間シングルランキングを見てみると、ここ5年間のトップはすべてAKB48です。さらに5年分のトップ5(全25曲)のうち、なんとAKB48が23曲を占めています。やはりAKB48=ヒットなのでしょうか? いやいや今年はピコ太郎「PPAP」でしょう。RADWIMPS「前前前世」でしょう。宇多田ヒカルも復活したでしょう。星野源「恋」もみんな踊っているでしょう。……そんな声も聞こえ

    『ヒットの崩壊』「PPAP」はヒットなのか? - HONZ
    kenjiro_n
    kenjiro_n 2016/12/04
    あくまでビジネスとして売ることを前提とした音楽のみの話のようだ。「作り手と受け手」という表現があるが「送り手」をこの書評あるいは本自体が見落としているのか、あるいは意図的に無視しているのかはわからず。
  • 『限りなく完璧に近い人々』北欧の人って本当に幸せなの? - HONZ

    北欧諸国といえば、税金は高いが充実した福祉が存在し、経済は概ね堅調でしかも労働時間が短く、民主的で腐敗の少ない政府を持ち、そのうえ、シンプルでオシャレな家具が溢れる地上の楽園というようなイメージ゙があるのかもしれない。実際に英国にあるレスター大学の心理学部の「人生の幸福度指数」という調査では、デンマーク人が人類でもっとも幸福な国民に選ばれている。2011年に国連が行った世界幸福度レポートでも1位がデンマークで2位がフィンランド。ノルウェーが3位でスウェーデンが7位という結果もある。 HONZでも最近、新メンバーの堀内勉が『フィンランド人が教える当のシンプル』と言うのレビューを書いている。書によればフィンランド人は朝の8時から仕事を始め夕方の4時くらいで仕事を切り上げる。仕事と家族、そして個人の自由な時間とのバランスを大切にしており、夏休みは平均で4週間もあり、多くの国民が田舎にコテー

    『限りなく完璧に近い人々』北欧の人って本当に幸せなの? - HONZ