「その」歴史に生きた家族の映画 4月3日から東京を皮切りに全国で順次ロードショー公開される中国映画『在りし日の歌』(原題「地久天長」、英題“SO LONG, MY SON”)は上映時間185分の長編である。同映画は2019年3月に開催された第69回ベルリン国際映画祭で、主演の王景春(ワン・ジンチュン)と詠梅(ヨン・メイ)が、それぞれ最優秀男優賞と最優秀女優賞を受賞した「ダブル受賞作品」である。 『在りし日の歌』という邦題は詩人の中原中也の詩集と同名だが、映画は中也の抒情詩とは正反対の叙事詩であり、中国で2組の家族が1980年代初期から2011年までの約30年間を心に葛藤を抱いてもだえながら生きた歴史絵巻である。なお、原題の「地久天長」は2組の家族の間で友情が永久(とこしえ)に変わらぬことを表すと同時に、人間の営みが永遠に続いて行くことを意味している。 中国北方の内陸部にある国有企業で働く、