人口が減少し、社会の成長が見込めない時代といわれます。一方で、科学技術の進化が、高齢化の進む日本の未来を、だれにとっても暮らしやすい社会に変えるのではないかともいわれています。わたしたちは一体どんな社会の実現を望んでいるのでしょうか。 幸福学、ポジティブ心理学、心の哲学、倫理学、科学技術、教育学、イノベーションといった多様な視点から人間を捉えてきた慶応義塾大学教授の前野隆司さんが、現代の諸問題と関連付けながら人間の未来について論じる本連載。11回目は「脳はなぜ心を作ったのか」がテーマです。 ---------- 連載、11回目となりました。ここからはしばらく、これまでとは趣向を変えて、これまでに書いた本に関することを書こうと思います。 2004年に『脳はなぜ「心」を作ったのか ── 「私」の謎を解く受動意識仮説』(筑摩書房)を書いたのが42歳の時でした。あれから、14年。この間に16冊の単