2014-07-30 病室 グレープフルーツは匙で掬って食べるよりも皮を剥いてひと房ずつ食べるのが好きだと言うので、利き腕にギブスをしたその人のかわりに剥いてあげたら、その人はとても喜んでありがとうやさしいねと何度も言いました入院三日目に誰かが持ってきたというくだものの盛り合わせの籠を指さして好きなのを食べていいよと言われたけれども、わたしはその人の前だと緊張してしまってものが食べられないのです わたしにとっては「ともだち」と「あこがれの人」のあいだぐらいのその人が入院したと聞いてからお見舞いに行こうと決意するまで三日も悩んだし、昨日の夜には会ったら何を話そうかと頭の中で喋ることのリストまでつくったほどでした その人はくだものの籠を眺めながら、メロンは大好き、マンゴーはまあまあ好き、キウイは別にふつう、と選り好みしてからふいに「でもこれを持ってきた人は嫌い」と呟いたから、わたしはびっく