⑴「自己啓発書」市場の特徴 Ⅰ「自分自身の人生をモデルにして売り込む」 自己啓発書の特徴として、「自分自身の人生をモデルにして売り込む」点がまず挙げられる。これはブルデューの定義する「倫理的前衛」の概念に当てはまる。つまり、「常にモデルとして、自分の作り出す生産物の価値の保証として自分自身を売って」おり、また誰よりも「自分の呈示し体現するものの価値を信じている」人々である。啓発書の著者たちは、自分の人生を差し出して、自身のアイデンティティを証明し、またそのアイデンティティの確立法を世界に向けて発信している。 Ⅱ「内容よりも著者の有名度が決め手」 自己啓発書の市場では、実は「文化媒介者」(編集者)によってある程度「売れるフォーマット」が用意されている。著者は自ら、あるいは編集者と協力してこうしたフォーマットに原稿を落とし込んでいく。また、実質的に自己啓発書では「内容」よりも著者の「有名度」(