オレはツッパリヨシフミ。つっぱってる。オレはどこかわからない谷の中で不思議な女とあった。 だが、次の瞬間、オレはたそがれた小汚いバーの片隅のテーブルに腰掛けていた。向かいにはさっきの女。美人だが、よく見ると若干あごがしゃくれている気がしないでもなかった。オレたちが腰掛けている背の高い鉄製のイスには木の背もたれと腰掛があり、オレのケツに冷たさを感じさせる。オレたちは木製の丸いテーブルに肘をつけて向かい合っていた。テーブルの上には、誰かのピザの食べカスだろうかチーズのようなものやら酒のあとやらくっついていた。だが、その汚さはオレを少し落ち着かせてくれてもいた。オレはまったく状況が把握できていないにも関わらず、リラックスした気分になり、その女のことも少し忘れかけていた。 「私は今井絵理子」 女が突然しゃべりだして、オレはぎょっとした。 「え?君は…ここはいったい?」 「ここは苫小牧の小さなバー」