(第1回 http://d.hatena.ne.jp/cinemathejury/20090726/p1) 言葉どおりに少年は翌日の朝、1台のリヤカーを引いて現れた。その荷台にはいくつもの絵の具の缶やバケツ、それから長い梯子が積まれていた。 短くなった髪の裾を自分で切りそろえたチロは、通りすがる男たちに声をかけるのも忘れて、じっと少年の作業を見守っていた。 まず少年はローラーを使って、パチンコ店跡の灰色の壁を真っ白に塗り替えはじめた。広い壁面をくまなく塗りつぶすために、少年は早朝から日の暮れるまでの間、何度も長い脚立を昇り降りし、もうひとつの脚立の上にペンキの入ったバケツを載せる動作をひとりで繰り返していた。 翌日も少年は同じ仕事を反復し続けた。チロは黙ってその様子を見ていたが、やがて少年の元へと歩み寄ると、無言のままにバケツの上げ下ろしや、新しいペンキを補充する作業を手伝いはじめた。少年