桃畑のちょうどまんなかに広場のような場所には、葉脈が全体に力強く広がった緑葉と細やかな繊毛に覆われたツルが絡み合って生える南瓜のための場所があり、そこにくれば畑に面した道路からは自分の姿が容易には見えない。ハツイは桃畑でなにか作業をしている間に尿意を催すと、そこまで歩いてからズボンを下ろし、しゃがみ込んで用を足した。それはこの家に来てから52年間、当然のように繰返してきた行為であり、娘や孫に何を言われようが恥ずかしくもなんともないとハツイは考えていた。前の日に大雨が降ったので桃の様子が心配だ。そう思って畑まで様子を見に来たその日も同じようにして用を足した。腰を下ろし視線が地面にほど近いところまでくると、短く刈り揃えられた雑草の合間から湿った土の匂いがする。雨が降った次の日はその匂いがより一層強くなり、くしゃみがでそうになる。それを我慢しながら用を足した後、家から畑まで乗ってきた自転車を止め