『最強レスラー数珠つなぎ』イースト・プレス 尾崎ムギ子/著 人はなぜプロレスに惹かれるのか。 かつてのニューヨークとロサンゼルスという東西海岸の大都市のプロレスを例をあげて、その本質を看破したのは、柳澤健である。 〈イタリア系のブルーノ・サンマルチノ、ギリシア系のジム・ロンドス、アルゼンチンのアントニオ・ロッカ、メキシコのミル・マスカラス、そして日系の力道山、コリアンのパク・ソン。 彼らの戦いは、エスニックグループの確執の代理戦争であり、大都市のプロレスは、社会の下層で憎しみ合う者たちの欲求不満解消装置として機能している〉(『完本 1976年のアントニオ猪木』) プロレスが劣等感、劣情といった負の感情と深く結びついているのは、同感だ。 その意味で、『最強レスラー数珠つなぎ』の著者、尾崎ムギ子がプロレスを描くようになったのは必然だったのかもしれない。 彼女は文章を書く仕事がしたいと広告代理店