従順な消費者とは違う「ファン」という存在 この議論はどちらか一方だけが正しく他方が間違っているという種類のものでは無い。『100日後に死ぬワニ』に関して巻き起こった毀誉褒貶はファンという現象について考える良い材料である。 ファンとは何だろうか? ある作品のファンであることは、単純にその作品の関連商品ならなんでも購入する従順な消費者であることとイコールではない。ファンは時に作品に強い愛着をもち、彼らが作品の本質的な価値と考えるものを作品の作り手や権利保持者が毀損していると考えれば彼らと戦うことすらある。 だからこそ、商業メディアや営利企業にとって、非営利的な作品への愛着を持つファンとのコミュニケーションは一筋縄ではいかない。私は資本主義社会における文化や芸術についてその受け手側に注目して研究をしているが、今回はファン研究の第一人者の一人であるヘンリー・ジェンキンスの議論を参照して、『100日