子供から大人へと成長していく時代、「楊夫人(マダムヤン)」(ハウス食品)の存在はインパクトがあった。この「面妖な」インスタントラーメンの発売は昭和57(1982)年のことであった。 当時の子供たちの間でさえ、インスタントラーメンというものは、中華料理店で食べたり店屋物としてとったりするラーメンではなく、いわばそれに似せた「雰囲気だけのもの」だということがわかっていた。 ところが、このマダムヤンが「訴えた」ことは、インスタントラーメンなのにこんなにおいしいし、しかも値段も高い。「本格中華料理店にしかいないような楊夫人がサーブしてくれる1杯2800円ぐらいの気分のラーメンはどうよ」ということなのであった。 面妖さをもう少し解説する。当時の子供たちの混乱の大きな要因は、「マダム楊」という妖艶なキャラ設定に負うところが大きい。チャイナドレスに派手な化粧、神秘なる異国女性のかもし出す艶やかなたたずま