「ことばと心の謎」に迫る研究のきっかけ ある日、町の乳幼児健診から帰ってきた心理士の妻が、ビールを飲みながら「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ(話さないよねぇ)」と言ってきました。 障害児心理を研究する私は、「それは自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)の独特の話し方のせいだよ」と初めは静かに説明してやりました。しかし妻は、話し方とかではなく方言を話さないのだと譲りません。 やり取りするうちに喧嘩になり2、3日は口を利いてくれませんでした。こちらも長年、その道の研究職であるつもりでしたから、たとえ妻でもこんな意見は聞き捨てならず引くに引けません。 「じゃあ、ちゃんと調べてやる」 これが思いがけずその後十数年にもわたる「ことばと心の謎」に迫る研究のきっかけだったのです。 私は軽い気持ちで、知り合いの特別支援学校の先生方にこの話をしてみました。するとなんと妻の発言を支持する意見ばかりが寄
はじめに(評者・田楽心 Den Gakushin) 原題 著者について 序論 第一章 ポストモダニズムーー知識と権力における革命 第二章 ポストモダニズムの応用的転回ーー抑圧を見えるようにすること (評者補足)応用ポストモダニズムの各理論について 第三章 ポストコロニアル理論ーー他者を救うために西洋を解体する 第四章 クィア理論ーー「普通」からの解放 第五章 批判的人種理論とインターセクショナリティ ーーいたるところにある人種差別を終わらせるために 第六章 フェミニズムとジェンダー研究ーー洗練された単純化 第七章 障害学と肥満研究ーー支援グループのアイデンティティ理論 第八章 「社会正義」の研究方法と思想、第九章 実践の中の「社会正義」ーー理論はいつも、紙の上では良く見える 第十章 「社会正義」イデオロギーの代わりとなるものーーアイデンティティ・ポリティクス抜きのリベラリズム 評価(評者・
JLさんのスレを読んでいて思い出したのが『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』。失業率2%台という世界でも稀な需給逼迫状況なのに賃金が上がらず、逆に日本の数倍の失業率の欧米では賃金が上がるのはなぜなのか。経済理論に反するような… https://t.co/2cerATzVIF
コロナ禍に見舞われてから、「エッセンシャルワーク」という単語を目にするようになりました。社会の中で必要不可欠な仕事、医療従事者や宅配業の配達員、スーパーマーケットの店員、ごみ収集員などがそれに当たります。 一方で、2020年7月に日本語訳の「ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論」 が刊行されるなど、個人的には仕事とは何か、必要か必要じゃないかという視点を持つことが頻繁になりました。 ブルシット・ジョブとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取り繕わなければならないように感じている。 ――デヴィッド・グレーバー「ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論」 私は彼の「負債論」に魅了されて以来デヴィッド・グレーバーの軽いファンだったので、彼の
"Soka Gakkai’s Human Revolution: The Rise of a Mimetic Nation in Modern Japan"はめちゃめちゃすごい本なので読んでほしいという話 なんというか、ビビった。 読んでるときに何度か声を出して叫んでしまった。 同じ時代でほぼ同じテーマに取り組んでいる研究者の本についてこれを言っていいのか分からないが、これまでに書かれた日本の創価学会についての著作のほとんどを過去にするような著作だ。 言いすぎだと思う。 言い過ぎだと思うけれども、それくらい今回紹介するレヴィ・マクローリンさんの著作『Soka Gakkai’s Human Revolution: The Rise of a Mimetic Nation in Modern Japan』は時代を画する一冊だと思う。 学術的にもきわめて興味深い分析を含んでいるのは言うまでもない
「俺はいつになったら解放されるんだ…」 「中国人はこの思いをわかってくれない。でも、どれだけ身近な相手であっても、普通の日本人では絶対に理解できない」 冠婚葬祭の場以外で、57歳の男がワンワン泣いている姿を見たことがあるだろうか? 私は見た。しかも、相手は数多くの「反中本」の刊行で知られる、あの石平である。 ちょうど30年前の1989年、北京で体制改革を訴える学生デモを中国共産党当局が武力鎮圧した六四天安門事件が起きた。一昨年末、私は同事件をテーマにした『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』の取材のために天安門世代の1人である石平に会ったところ、なぜか彼の心の奥に封じられていた重い扉を開けてしまった。2018年2月に『現代ビジネス』サイト上でおこなった以下の対談もその一部である(<天安門事件で空っぽになった石平が語る「その後の人生」>)。 私はその後も何度か石平と会い、やがて天安門事件
140字の戦争 SNSが戦場を変えた 作者: デイヴィッドパトリカラコス出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/05/31メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るSNS上では常に人々が罵り合っておりまるで戦争状態のようだが、そういう意味での戦場ではなく、実際にウクライナやイスラエルvsハマスといった実在する戦場をいかにSNSが変えたかというレポートである。『これは戦争についての本である。と同時に物語──戦争のナラティブとナラティブの戦争──についての本でもある。』 著者は中東をメインに取材するジャーナリストだが、イスラエルとガザの情勢などを調査・報道するうちにとある大きな変化に気がついたことが本書を書くきっかけになったようだ。それは、戦争が、戦車や大砲を用いる物理的なものと、民間人までをも巻き込みソーシャルメディアを駆使したナラティブなものの2つに分かれているという事態
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