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日本の教育レベルの高さを研究するアメリカ では、何が日本の子どもたちの高い学力の主因なのか? 非常に面白い問いですが、残念ながら、日本の教育研究者はこの問いを十分に検討していません。彼らは概ね、日本の教育をダメだという前提で研究をしているので、日本の教育のうまくいっている部分を見ようとしません。 ですから、「日本の子どもたちは、なぜ学力が高いのか?」という問い自体を思いつくことがないのです。日本の教育研究者も、最近ピザなどのデータをだんだんと使うようになってきてはいますが、日本の教育がダメだと言うために、様々あるデータを恣意的に選択して使っているように見える場合すらあります。 ただ、海外の研究者の中には、日本の高い学力の原因を真摯しんしに調べている人もいます。例えば、アメリカの教育研究者のジェームス・スティグラーがそうです。 彼は、日本の小中学校とアメリカの小中学校を丹念に比較する研究をし
『知られざる白川郷 床下の焔硝が村をつくった』 [編著者]馬路?藏 [発行]風媒社 [発行年月日]2009年1月15日 [入手の難易度]易 今日の話は、現在、世界遺産となった白川郷で密かに焔硝(えんしょう)が作られていた、しかも長い年月に渡って密かに行われていた、という謎についての物語だ。焔硝(硝石とも)というのは鉄砲に用いられる火薬の原料である。 この物語は、2002年、著者らが白川村教育委員会から「合掌家屋の床下の土」を化学分析するように依頼されたことに始まる。その土を分析した結果、驚くべきことがいろいろわかってきた。 調査で明らかになったのは、江戸時代に火薬の原料である焔硝(硝石)を人尿、蚕糞、野草などを材料とし、土壌微生物のはたらきを利用してつくっていたという驚くべき事実だった。 さらに、この調査をもとに白川村に残る文献や古文書、高齢者へのインタビューなどを行い、実際にどのような材
『マンガ 認知症』をご愛読いただき、ありがとうございます。 おかげさまで重版が続き、嬉しい反響に喜んでおりましたが、筑摩書房のホームページに「『マンガ 認知症』に書いていなかったこと」について投稿をいただきました。 この投稿を受けて、認知症の祖母の介護に悩んでいたマンガ家・ニコさんが、再び認知症の専門家・サトー先生のもとを訪れました。 サトー先生、どうして何をしても「ありがとう」と言ってもらえないんですか――? <サトー先生からのアドバイス> 「ありがとう」と言ってもらえないときは―― 1)良い意味であきらめ、まずは自分がラクになる 2)認知症の人にポジティブな気分を伝える 3)認知症の人が「いいこと」だと思えることをする →次ページにて、サトー先生の解説をお読みいただけます。
生きている限り、私たちは毎日何度もトイレへ向かう。流して終了。しかし、ちょっと考えてみると、知らないことだらけです。流したものはどこへ? どうやって処理? そのために誰が、どんな苦労を? いつのまに日本は「トイレ最先進国」に? ジャーナリストの神舘和典氏と文藝春秋の前副社長で編集者の西川清史氏が、あらゆる疑問を徹底取材したルポ、『うんちの行方』から抜粋・再構成して紹介します。 TOTOの東京オフィスで取材を終えた帰り道、まわりのマンションを眺めながら、共著者の西川さんが妙なことを言い出した。 「あの高層マンションのすべての部屋で一斉に排泄して水を流したら、どうなるかな? 低層階のトイレからウンチが噴出するんじゃなかろうか?」 「全フロアのトイレで同時にするなんて起こりませんよ」 「うん、現実的には起きないかもしれない。でも、マンションの住民集会で日時を決めていっせいに流しましょう、と決議し
松本清張が「砂の器」を書くまで:ベストセラーと新聞小説の一九五〇年代 (早稲田大学エウプラクシス叢書) 作者:山本 幸正 発売日: 2020/02/10 メディア: 単行本 まず、一部を伏字にして引用。 ●●●●は厄介な存在である。議論の通俗さや粗雑さや幼稚さを批判しても、通俗であり粗雑であり幼稚であるのが「一般民衆」の意見であると居直られてしまう。精緻な議論や抽象的な論理を提示したら、「ゾウゲの塔」に閉じこもっている高踏的な「知識人」だと、逆になじられることになる。 さて、●●●●とは誰でしょう? 今の時代のいろんな名前が思い浮かぶはず。先の引用は、山本幸正『松本清張が「砂の器」を書くまで ベストセラーと新聞小説の一九五〇年代』から。でも、●●●●は松本清張ではない。 ●●●●は、同書の全三部のうち第一部を使って論じられた石川達三。清張論なのに別の作家に三分の一も使うの、と最初は思った。
倉田幸信 「翻訳者の書斎から」第5回 "The Coddling of the American Mind" ( 甘やかされるアメリカン・マインド ) by Greg Lukianoff, Jonathan Haidt (グレッグ・ルキアノフ、ジョナサン・ハイト) 2018年9月出版 いきなり私事で恐縮だが、私は主夫として2人の子供を育てたことがある。1人目の長男のときは、屋外だろうが室内だろうが、一度でも床に落ちたおしゃぶりはすべて煮沸消毒していた。バイキンが怖かったからだ。だが2人目の長女のときは、多少の泥がついたおしゃぶりでも、適当に服でぬぐってそのままくわえさせていた。赤ちゃんはけっこう頑丈だとわかったので、面倒くさいことはしなくなったのだ。 その後、医学の世界で“幼少期の環境があまりに清潔だと免疫力が低くなる”とする「衛生仮説」の考え方が広まっていることを知り、我が意を得たりと思
トランネットのオーディション課題概要を見て、翻訳課題になっている本、どこかで見たことあるような……と記憶を辿ったら、少し前にベンジャミン・クリッツァーの「アメリカの大学でなぜ「ポリコレ」が重視されるようになったか、その「世代」的な理由」で取り上げられ、これを書くために調べなおしたら、2年近く前には翻訳書ときどき洋書で倉田幸信さんも取り上げていた本である。 The Coddling of the American Mind: How Good Intentions and Bad Ideas Are Setting Up a Generation for Failure 作者:Haidt, Jonathan,Lukianoff, Greg発売日: 2019/06/06メディア: ペーパーバック The Coddling of the American Mind: How Good Inten
囚われし者たちの国──世界の刑務所に正義を訪ねて 作者:バズ・ドライシンガー発売日: 2020/12/25メディア: 単行本(ソフトカバー)この『囚われし者たちの国』は、刑事司法教育を教える大学ジョン・ジェイ・カレッジ・オブ・クリミナル・ジャスティスの女性教授であるバズ・ドライシンガーが9カ国の刑務所をまわって、今あるべき刑務所、許し、罪と罰の関係性について思考をめぐらせるルポタージュである。日本にいると法律に違反したら(執行猶予はあるけど)投獄されて自由を制限されるのは当たり前でしょ、と思うが、世界を見渡してみると刑務所も罪の償い方も千差万別であり、何が正しいのかわからなくなってしまう。 本書の著者は、出発点はアメリカの刑務所の実態のひどさから、刑務所についての疑問がスタートしている。アメリカが世界人口で占める割合は5%弱なのに、囚人が収容されている人数は230万人、世界の25%に達する
古代文明から現代の経済発展までを描いた「中国の歴史」全12巻が、10月から講談社学術文庫で刊行されました。2004年から05年にハードカバー版で刊行されたこのシリーズは、中国・台湾でも翻訳出版され、累計部数は150万部に達しています。壮大な中国通史の何が人々をひきつけるのか、今の中国を読み解くカギをどう歴史に求めるべきか。シリーズの編集委員をつとめた鶴間和幸氏(中国古代史)と、執筆者の一人である天児慧氏(現代中国論)に語っていただきました。 なぜ、中国でウケたのか? 鶴間 天児先生がこのシリーズで執筆されたのは、現代中国をとりあげた第11巻『巨龍の胎動』ですが、刊行から16年たって、もはや胎動ではなく、まさに巨龍が世界の中心になりつつあります。 当時は、まさかこんなに早く中国が世界で大きな存在になるとは予想できませんでした。正直なところ、いまの中国の姿には驚いています。 天児 おっしゃると
HOME コラム アガサ・クリスティー作家デビュー100年 「記憶はウソをつく」から読み解く、カズオ・イシグロとの共通点 文:川口あい 2020年はクリスティー記念イヤー クリスティー作品のトリックの多彩さは言うまでもない。なかでも「記憶」を手法として使うときの描写は情緒的ともいえる。 心理学者の榎本博明の著書『記憶はウソをつく』によれば、記憶には、あとから書き換えられたり捏造されたりする特徴があるという。同時に人間には「想像しイメージしたことが、時を経るにつれて現実に経験した出来事の記憶の中に紛れ込んでいく」という「記憶のゆらぎ」に関する法則がある。あえてそうした「記憶」の曖昧さに耽溺する人間の哀しい性や、そこから生まれる思い込みや自己欺瞞が、クリスティー作品においても、事件の背景や犯人の動機に深みをもたせる。 「記憶」は嘘をつく 「記憶」が物語の核となるクリスティー作品の代表例といえば
現代という時代をどう特徴つけるかという問題はむずかしいが、誰もが納得する一つの特徴は、人々が不寛容になったことだろう。「こんなやつは許せない」という情念による悪意はネットに溢れている。他罰的な正義によってしか自分や連帯を維持できない人々に溢れているのは、こうしたネットの世界が顕著だが、現実の世界も同じようになってきた。そして、それらが生み出す全体図は、結果としては不合理で不毛な緊張と争いでしかない。どうすればいいのか。 一つには、18世紀啓蒙主義者ヴォルテールの言葉とされている「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」という格律が有効であるかのように思える(余談だが、この言葉の典拠は本書にも言及があるが不明である)。そして、森本あんりの新著『不寛容論: アメリカが生んだ「共存」の哲学』はこう謳われている。 《こんなユートピア的な寛容社会は本当に実現可能な
私だけの感覚だろうか。今年の安倍内閣のことがうまく思い出せない。令和時代最初の内閣であり、一年ほど続いた第4次安倍第2次改造内閣なのだが、あれはなんだったのだろうと、奇妙に遠い過去のように思えてくる。内閣の終焉は、表向きは、安倍晋三が持病に負けたということだが、コロナ騒ぎに潰れたという思いのほうが強い。おそらくその感覚はそう間違ってもいないだろう。唐突な終わり方でもあったせいか、その内閣の路線継続は誰もの脳裏に自然にあり、ゆえに長期安倍政権の内実を担ってきた菅義偉氏が自然に首相となっても違和感はない。そこまでは、いいだろう。だが、だから菅義偉首相のことがわかるかというと、実質安倍政権の継承だろうとは思うものの、なにか私は腑に落ちない。菅義偉内閣のことも、再考すると、実はよくわからない。一つには、彼が本格的な長期政権の軸となるのか、なんらかの権力の移行期間の現象なのか、ということも、よくわか
新訳 夢判断 (新潮モダン・クラシックス) 作者:フロイト新潮社Amazon 古典をきちんと読まなければ、みたいな強迫観念は、昔は強かったけれど、いまはあまり残っていない。が、フロイトは高校時代に岸田秀に入れ込んだこともあり、またいろんな人がフロイトはすごい、フロイトにかえれ、みたいなことをしきりに言うので、いずれ読まねば、という気持はあった。そして高橋義孝のギクシャクした金くぎ翻訳をなどを読んで挫折し、いやこれはぼくの理解力が足りないのか、これをきちんと理解すると、何かすごい世界が広がるのか、と思っていた。いつの日か、ちゃんと読もう…… そしてその「いつの日か」がやってきた。フロイト『夢判断」新訳だ。 そしてこれは、すばらしい。訳は実に明快でわかりやすい。これまで読んで挫折したのは、何よりも翻訳がダメだったせいだ、というのがはっきりわかる。が、同時にもう一つわかったことがある。フロイトは
容易に想像がつくが、『自殺学入門』によると、結婚して収入のある女性よりも、無職で離婚した男性の方が、より自殺率が高いという。 さらに、 太平洋・瀬戸内海沿岸よりも、日本海側 平野部よりも、山間部 日照時間が短く、積雪が多い地域 の方が、自殺率が高くなるという。注意すべきは因果ではなく相関の関係にある点だ。山間部で積雪が多い地域だと、他者の支援や病院に行く必要があっても、そのコストが大きいだろうし、人口が少ないことから、福祉などの社会資源に乏しいことは明白だ。 また、パートナーと別れる場合の自殺リスクも、男女で差が出てくる。離婚であれ死別であれ、配偶者を失ってより大きなダメージを受け、自殺リスクになるのは男だというのだ。 一方で、自殺未遂は圧倒的に女が多いという。これは、男の方が、自分の身体にダメージを与える能力が高いというのと、男の方がためらわず、より致死的な方法を選ぶ傾向にあるからだとい
「困ってる人は助けない方がいい。 困ってる人は困ってる方が良いからその状態を解決しないし、助けると自力で困難を抜け出す力が付かない」みたいな雑なツイートが流れてきた Twitterのフォロワーがファボってたから目についた。Twitterで言うとフォロワーを煽ってると思われそうで嫌だからこっちに書くが、 日本人ってこういう単純なモデルに当てはめて現実の複雑さから逃げる怠惰な言説が大好きだよねと思った 貧乏人の経済学という本がある。発展途上国への経済援助についての著者の成果をまとめた本で、 著者のバナジー&デュフロはまさに発展途上国援助への功績を称えられてノーベル賞を受賞した 著者のアプローチは極めて実証的かつ定量的なもので、これまで途上国援助の方面で言われていた二つの理論、 援助は貧乏人を怠け者にしてしまうから少なくした方が良いという言説と、 片や、貧乏人が貧乏から抜け出せないのはまさに援助
『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露本 この本をここで紹介していいものか迷ったが、著者の真摯な姿勢に心を動かされたので、おもねらずにレビューしてみたい。 本書は、ベストセラー『7つの習慣 最優先事項』の訳で一躍売れっ子翻訳家になった著者が、出版社との様々なトラブルを経て業界に背を向けるまでの顛末を綴った、げに恐ろしきドキュメントだ。 驚くことに、名前こそ伏せてあるが、理不尽な目に遭わされた出版社のプロフィールが本文や帯でずらずら書かれている(業界歴の長い人ならすぐにわかるのではないか)。著者の名前をネットで調べれば翻訳を担当した書籍がばんばん出てくるし、もはや告発書、暴露本と言っても過言ではない。 まずは著者が経験した「天国」から。 出版翻訳家を夢見たのは21歳のとき。大学卒業後は大学事務員、英会話講師、
『完全自殺マニュアル』や『0円で生きる』の著者として知られるライターの鶴見済(つるみ・わたる)さんは近年、生きづらさを感じる人たちのための集会「不適応者の居場所」を都内で定期的に開催しています。また、2012年からは不要になった物を無料で放出する「0円ショップ」を仲間たちと運営してきました。 1993年出版の『完全自殺マニュアル』(太田出版)で自殺の方法を紹介し、日常と向き合う「心構え」を持とうと提唱した鶴見さん。以後も『脱資本主義宣言』『0円で生きる』(ともに新潮社)など、社会からはみ出そうになっている人たちに、手を差し伸べようと執筆を続けてきました。 そんな鶴見さんは、今を生きる人たちがどのような「生きづらさ」を抱えているとみているのでしょうか。またその背景に、どのような問題があると考えているのでしょうか。話を聞きました。 「降りた」あと何もなくて孤立してしまう ーー鶴見さんは、今の人
なんか、増田ばっかり見てるようで「ヒマ人か」とバカにされそうでもあるのだけれど、ここのとこ体調がイマイチで、気合を入れて行動するだけのエネルギーがなかなかとれない。そのエネルギーを本来はそれほどエネルギーを要求されないはずの家庭教師の仕事のために温存しなければならないから、いきおい、ダラダラ過ごす時間が長くなる。まるで中学生がサボる言い訳のようではあるが、まあ、低調な時期がくればまたテンションの上がる時期も来るはずと、ここは開き直っている。 で、ここのところ気になった「はてな匿名ダイアリー」の投稿、通称「増田」2件: anond.hatelabo.jp anond.hatelabo.jp 前の方のエントリで、著者は ・時間内に長文から要点を抜き出してまとめる能力(理解力・まとめ力) ・読み上げた音声から概要を図にして説明する能力(理解力・整理力) ・3回読み上げられた文章をできる限り暗記し
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