いま日本の直面している困難は、その社会構造にかかわる問題といえるでしょう。中国とアメリカは「中間集団」の求心力が弱い点で共通しており、IT産業のような水平分業型への構造変化には中国のほうが対応しやすいと思います。日本は「中国につくれるようなコモディティから卒業してITに重点を移せ」といわれますが、フアウェイと日本メーカーをみてもわかるように、この分野でも中国のほうが強いかもしれない。これは深刻な問題です。 この一因は日本の伝統的な共同体の構造にもありますが、直接には明治以降の近代化や戦時体制によってつくられた集権的な企業システムが原因でしょう。アメリカの経済危機のコアにある問題は金融システムですが、日本の危機のコアにあるのは企業システム、特に労働市場だと思います。昨今の非正規労働者の問題についても、製造業の派遣を禁止するなど倒錯した議論が行なわれていますが、その原因が過剰な解雇規制にあるこ