国民所得に占める税金や社会保険料などの割合を示す「国民負担率」が、2015年度は43・4%となり、4年連続で過去最高を更新すると財務省が見通している、という報道があった。 税金について議論するとき、財務省の資料に出ている国民負担率を持ち出すことが多い。 国民負担率の国際比較は、比較概念も統一されており、それなりに有用なデータである。それによれば、日本の国民負担率はOECD(経済協力開発機構)33カ国中7番目の低さである。 財務省は、国際的にみても国民負担率が低いのだから、もっと高めてもいいという魂胆なのだろう。 ただ、日本より負担率が高い26カ国中23カ国は欧州の国々で、日本より低い6カ国中には欧州の国は1つしかない。非欧州の先進国9カ国中では4番目に国民負担率が高い国であり、日本の国民負担率は決して低いとはいいがたい。 その上、国民負担率の定義では、分母を国民所得にするが、海外では国内総
中国人民銀行(中央銀行)は2月28日、金融機関の貸し出しと預金の基準金利をそれぞれ0・25%引き下げると発表した。利下げはどのような効果を生むのだろうか。 最近の中国経済はあまり調子が良くない。中国国家統計局と中国物流購買連合会が1日発表した2月の製造業購買担当者指数(PMI)は49・9だった。1月には景況判断の節目となる50を2年4カ月ぶりに割り込んだが、2月もさえない状況が続いている。 先進国では、国内総生産(GDP)全体に占める消費の割合が大きいが、中国では投資の割合が大きい。このため、不動産市況悪化の影響が大きく、経済活動が鈍っているのだ。 これはインフレ率に表れている。消費者物価指数は対前年同月比で見ると、1月は0・8%増と、リーマン・ショック後の落ち込みから脱しつつあった2009年9月の0・6%増以来、5年2カ月ぶりに1%を割り込んだ。中国のインフレ目標は3・5%なので、かなり
1955年、東京都に生まれる。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、総務大臣補佐官などを歴任したあと、2006年から内閣参事官(官邸・総理補佐官補)。2008年退官。金融庁顧問。2009年政策工房を設立し会長。2010年嘉悦大学教授。主要著書に『財投改革の経済学』(東洋経済新報社)、『さらば財務省』(講談社)など。 高橋洋一の俗論を撃つ! 元財務官僚の経済学者・高橋洋一が、世にはびこるもっともらしい「俗論」の過ちをズバリ解説。 バックナンバー一覧 7月4日、「見つけたと思うが、どうだろうか?」と欧州原子核研究機構(CERN:European Organization for Nuclear Research)の所長ロルフ・ホイヤー(Rolf Heuer)氏
週末に「法案通過と同時に野田首相が辞任を表明」とのウワサもかけ巡った6月26日「増税法案採決」はどうなるのかを予想してみる もはや民主党はクダクダだ。6月21日(木)までに採決すると野田佳彦首相はいっていたが、22日もできず、とうとう26日(火)になるという。 その前日の25日(月)午後には臨時代議士会が開かれる。実のところ、私はその夜に某民主党執行部幹部と勉強会の予定がある。それがセットされたのはこの騒動の前であり、彼もさすがにここまで党内事情がもつれるとは予想できなかったのだろう。国会が延長になって、しばし波静かな時にじっくりと勉強という趣旨であったが、今のままでは増税反対派に最後の説得工作を行わざるを得ず、その勉強会もキャンセルになるだろう。 当面解散なしで消費税増税法案が3党合意で成立するということは、これまでの国会運営(昨年8月の東電救済法、今年3月の改正労働者派遣法、4月の郵政
5日のウォールストリート・ジャーナルの日本版ウェブサイトに興味深い記事が載っていた。 「橋下市長の次のターゲットは日銀白川総裁か」という刺激的なタイトルで、橋下徹大阪市長は「賛否の分かれる日銀の独立性に関して強い関心をみせている」とし、《日銀ではなく政治家が金融政策の最終責任をもつべき》《名目GDP(国内総生産)を伸ばすためにインフレ目標の設定は有効》などの橋下市長のツイッター上の発言を紹介している。 筆者の名前についても「橋下氏は、小泉純一郎政権の政策チームのエコノミストとして中心的役割を果たしていた高橋洋一氏から金融政策についてアドバイスを受けていることを明らかにしている」と書かれている。 この記事について、筆者のところに取材があったわけでないが、中央銀行の独立性について、「賛否が分かれる」としているのはおかしい。 これは日本のマスコミにも顕著な傾向だ。2010年5月26日、バ
6月1日から東京と上海市場で円と人民元の直接取引が開始された。 これまで円と人民元はドルを介して間接的に交換されており、交換手数料がかさむほか、ドル相場の変動で損失が発生する問題があった。安住淳財務相は「取引コストの低下や金融機関の決済リスクの軽減というメリットがあり、両国通貨の利便性の向上、東京市場の活性化にも資する」と述べている。 こうした方策を実施した背景には何があり、直接取引開始によってどんな変化が起きるのだろうか。 今回の経緯は、2011年暮れの日中首脳会談で、「金融市場の発展に向けて協力を強化する」と合意されたことだ。その中で「円・人民元間の直接交換市場の発展支援」が盛り込まれ、両国の実務者協議を重ねて、実現した。 中国は、米ドル離れを意図して、ドルを介さない貿易を拡大している。既にパキスタン、タイ、カザフスタン、モンゴル、ウズベキスタン、ニュージーランド、韓国、アラブ
日本国債へのマネー流入が加速し、国債の金利が0・8%台まで低下(価格は上昇)している。これについて「欧州危機再燃で緊急避難的に買われている」、「消費税増税法案審議が行き詰まれば金利は反転する」といった論調が見受けられる。 筆者はかつて大蔵省国債課で国債入札、国債整理基金オペなどを担当していた。通常の事務室とは隔離された「トレーディング・ルーム」で情報分析や入札事務を行い、民間金融機関の債券トレーダーと同じような環境にいたことがある。 固定金利もの債券の利回りは、同じ条件の国債利回りに信用リスクプレミアムなどをのせて決まる。そのベースとなっている国債利回りは、年限に応じて短期国債金利の将来予想の平均に流動性リスクプレミアムをのせて決まる。 そして、将来予想は、将来における経済状況や金融政策などで決まる。ここがポイントで、はっきり言えばよくわからないところ、よく言えば各トレーダーの腕の見
1日の衆院予算委員会で民主党の仙谷由人政調会長代行が「国債の金利が2%に上がったら利払いはどうなるのか」と問い、「財政再建は焦眉だ」と主張した。 これが、よく財政破綻論者が使う「経済成長すると破綻する」という奇妙なロジックである。ちなみに、昨年4月21日、OECD(経済協力開発機構)対日審査報告書の発表会見で、「経済成長すると破綻するのではないか」というフロアからの質問があった。 それに対して、グリアOECD事務総長は、「その質問は罠か」と冗談を交えながら、「金利が上がって財政が大変になるからといって成長を諦めるわけにはいかない。成長がすべて」と言い切った。 その時の質問も、仙谷政調会長代行と同じで、成長すると金利上昇によって利払いが増大して財政が破綻するというものだった。もちろん、成長すれば税収も上がる。しかし、財政破綻論者は税収より利払いが大きいと主張する。 彼らは財務省の「後
警察庁の統計速報値で昨年の自殺者が3万513人と14年連続で3万人を上回った。これについて藤村修官房長官は11日、経済事情を理由とした自殺が多いとの見方を示し、「デフレ下の経済状況を改善しないといけない」と強調した。 自殺の要因は、経済環境だけでなく、家庭、健康、男女、学校など多種多様だ。それぞれに応じて相談室の設置、カウンセラーの増強等の対策がある。「いのちの電話」が設置されている地域では、そうでない地域と比べ、男女とも自殺率が有意に下がっているというデータもある。 もっとも、1998年以降、自殺者が急増した原因は、経済状況の悪化によるものが大きい。98年は消費税率が3%から5%に引き上げられた直後で、その後、デフレが悪化している。景気が悪くなると失業が増え、自殺が増すのだ。ちなみに、1998年以降、男性の自殺が増しているが、これも景気悪化による失業増と関係を裏付けるものだ。 失業
小泉政権1ドル116円、安倍政権119円ーー「為替政策」で景気も財政もよくなるのに、民主党政権ではなぜできないのか 円高のまま増税なら日本沈没 これから年度末にかけて最大の論点は消費税率10%までの引き上げだろう。野田佳彦首相は11月19日、東アジアサミット後の記者会見で、消費増税法案は「法案提出するときが閣議決定だ。その前から与野党と政策協議をしたい」と語った。法案提出の一応の期限は来年3月末までだが、それまでに与野党協議して消費税増税を国会でスムーズに通したいとしている。 これはかなりムシのいい話だ。政権内からも異論が聞こえてきている。 民主党の小沢一郎元代表は19日夜、インターネットサイト「ニコニコ動画」の田原総一郎のインタビューで、消費税率引き上げについて「抜本改革を何もやらないで、ただ増税するのは反対だ。選挙の時に言っていた行財政の抜本改革はほとんどできていない。お金がないから消
政府の行政刷新会議(議長=野田佳彦首相)は、20日から23日まで、事業仕分けの第4弾となる「提言型政策仕分け」を実施する。 これまで「事業仕分け」または「深化した仕分け」と呼んでいたが、今回から「提言型政策仕分け」と名称が変わった。 その理由としては、野田首相から「提言型政策仕分けと呼びたい」との提案があったからだと蓮舫行政刷新担当相は記者会見で述べている。もっとも、仕分けには法的拘束力がないことが既にばれたので、「提案型」と言っただけだ。 かつて私が小泉政権で経済財政諮問会議特命室にいたとき、ある人から当時既に地方自治体で行われていた「事業仕分け」を経済財政諮問会議でも取り上げないかという話がきた。 政府が行うものには、企画立案の「政策系」と自らが事業主体になる「事業系」の2種類がある。前者は制度が中心で抽象的だが、後者は事業なので具体的だ。前者の改善には法改正を要するが、後者で
TPPで議論百出だ。私はTPP交渉参加に賛成だが、その第一の理由は自由貿易のメリットだ。もちろん自由貿易にはデメリットもあるが、メリットがそれを上回る。これは理論的にも歴史的にも示されている。もしこれが否定されるならノーベル賞ものだ。 TPPによるいろいろな影響を包括的かつ計量的に網羅した応用一般均衡モデルもいろいろあるが、国際機関でも使われているGTAP(Global Trade Analysis Project)により構築されたものでも、メリットのほうが大きい。これはデメリットにもなんらかの対応策があることを意味している。 混合診療との関係は? 第二の理由は国際交渉上のものだ。TPPには今のところ中国が参加していない。中国は今のところ自由貿易協定への参加は消極的だ。いまのうちに日本が参加しておけば、将来中国が自由貿易協定へ参加したり、あらたな枠組みを提示したりした場合、早めにTPPに参
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