【格差社会】 平野 啓一郎さん 2014年09月01日(最終更新 2014年09月01日 13時34分) 平野啓一郎(ひらの・けいいちろう)さん=作家写真を見る ◆「正直者は馬鹿」説の愚 今世紀になって「格差社会」が問題になるにつれ、「社会ダーウィニズム」的な言説も喧(かまびす)しく復活した。彼らは言う。経済的な「弱者」は単に怠惰であり、そんな連中を、どうして汗水垂らして働いているわれわれが、税金で養わなければならないのか? 「正直者が馬鹿(ばか)を見る」世の中はゴメンだ、と。 P・J・ボウラーの『進化思想の歴史』によれば、一般にヴィクトリア朝時代の情け容赦ない資本主義が起源と目されている社会ダーウィニズムは、必ずしもダーウィニズムではなく、むしろもう一つの進化論の仮説を唱えたラマルクの影響を受け、「適者生存」という造語を広めたスペンサーの思想に多くを負っているという。そして、それ自体