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ブックマーク / econ101.jp (150)

  • ノア・スミス「週末の小ネタ:アメリカ社会の不穏な情勢が退潮しつつある小さなきざし」(2024年3月29日)

    アメリカの不穏な情勢はピークを迎えていると,かなり早いうちにぼくは発言していた――だいぶさかのぼって,2021年中盤のことだ.それ以来に起きたいろんなことは,その判断と広い範囲で整合している.ただ,もちろん,不正だとして選挙に異論が唱えられたり今年の大統領選挙でトランプが当選したりすれば,状況は大きく変わるかもしれない.ともあれ,社会の不穏な情勢はちょっぴり引き潮になりはじめている小さなきざしはひとつまたひとつと現れている. たとえば,2020年2月(パンデミックが全面的に社会を襲う前)に比べて,いまニュースウェブサイトを人々が見る量はだいぶ減っている.また,右派系ウェブサイトへのトラフィックを見ると,非主流・過激派サイトも主流派サイトも,いっそう流入数が減っている. Source: TheRighting 左派はどうかと言うと,ハサン・パイカーみたいな主要な左派系ストリーマーの視聴数も,

    ノア・スミス「週末の小ネタ:アメリカ社会の不穏な情勢が退潮しつつある小さなきざし」(2024年3月29日)
  • ノア・スミス「気候変動をよく理解したいならグラフをいろいろ見てみることだ。解決するのに脱成長なんか必要ないよ」(2024年2月13日)

    気候変動に取り組むうえでの大きな困難の一つは、世の中に悪い情報源が蔓延していて、悪質な情報もばらまかれていることだ。左派の気候変動活動家たち(気候変動問題について何かしようと自身の時間と労力を費やす傾向が最も強い人たち)は、「100社の企業が世界の排出量の70%を引き起こしている」とか「10%の富裕層が排出量の半分を占めている」といった馬鹿げた主張をする疑似左派的な情報を入手してしまいがちだ。それから右派。彼らは、以前だと気候変動を否定することにやっきだったけど、最近になってグリーンエネルギーへの巨大な不信感(金融関係者を除けば、グリーンエネルギーは「恐怖、不確実性、疑わしい」)を煽り立てている。こうしたとりまく事象から、クタクタになってしまうんだ。結果、多くの人たちが、気候変動への議論を避けがちになってるんだと思う。 こうした状況には、当にイライラしてしまう。世の中には、当にたくさん

    ノア・スミス「気候変動をよく理解したいならグラフをいろいろ見てみることだ。解決するのに脱成長なんか必要ないよ」(2024年2月13日)
  • ノア・スミス「アメリカはどうやってソフトランディングを達成したのか?」(2023年12月20日)

    大いに待望されていた「ソフトランディング」(軟着陸)が,ふつうなら一筋縄でいかないはずなのに,どうやらアメリカでは達成できそうだという点で,大半の評論家たちの見解は現時点で一致してる――雇用や賃金に痛手を与えずにインフレ率を下げるという難業が成し遂げられそうだ. USスチール買収の件について書こうと思ってたけれど,鉄鋼業の歴史について読むべきものが積み上がってしまってる.そこで,そっちは明日に回さなくちゃいけない.さしあたって,マクロ経済の話を手早くやるとしようか. 大いに待望されていた「ソフトランディング」(軟着陸)が,ふつうなら一筋縄でいかないはずなのに,どうやらアメリカでは達成できそうだという点で,大半の評論家たちの見解は現時点で一致してる――雇用や賃金に痛手を与えずにインフレ率を下げるという難業が成し遂げられそうだ.というか,ぼく個人が「ソフトランディング」と呼んでいただろう結末よ

    ノア・スミス「アメリカはどうやってソフトランディングを達成したのか?」(2023年12月20日)
  • ノア・スミス「ソロー・モデルが中国について教えてくれること」(2023年12月23日)

    今週、経済学者のロバート・ソローが99歳で亡くなった。彼はこの分野における巨人であり、彼によってマクロ経済学は無数の方法で再構築され、それを今の僕たちは当たり前のように受け入れている。ソローは多くの重要な分野に携わったんだけど、一番有名な貢献(ノーベル賞の受賞)は、経済成長についてのソロー・モデルだ。なので今回のエントリでは彼を追悼して、ソロー・モデルは、この数十年間――特に中国経済で起こったことを説明するのにどう役立つかについて少し話してみようと思う。 経済はなぜ成長し、成長はなぜ止まるか? この問題は、経済学で一番重要な問題なんじゃないかな。そして、ものすごく難しい問題でもある。成長というのはすごく複雑で、国によって経験は異なっている。比較は当に難しい。ソロー・モデルは、ものすごくシンプルで、頭の良い中学生なら学ぶことができる。少しだけの変数・パラメーターしかない。こうした単純なモデ

    ノア・スミス「ソロー・モデルが中国について教えてくれること」(2023年12月23日)
  • アダム・トゥーズ「はじめにナポレオンありき:ナポレオンはヨーロッパ、そして世界経済をどう変えたか」(2023年12月3日)

    つまり、ナポレオンという人物には惹きつけられる広範な魅惑があるかもしれないが、皇帝の計画や野心という狭い焦点を当てると、フランス国家の行動と、それに対応して動員された大規模な対抗勢力の両者から定義される「ナポレオン時代」の影響の実像を見誤ってしまうのだ。 1790年代半ばから1814年までの驚嘆すべき20年間、フランスは、ナポレオン・ボナパルトの指導の下、ヨーロッパ大陸の大部分を支配するようになった。最盛期、ナポレオン帝国はその国境を、〔北海沿岸の〕低地帯諸国、イタリア、〔バルカン半島西部の〕イリュリア地方にまで広げた。同時に、スペインドイツ、イタリア、ポーランドはナポレオンの支配下に置かれ、多くはナポレオンの一族によって統治された。デンマーク、プロイセン、オーストリアは屈辱的な条件の同盟への署名を余儀なくされた。 この暴挙は、17世紀からのフランスの台頭によるヨーロッパの形成のクライマ

    アダム・トゥーズ「はじめにナポレオンありき:ナポレオンはヨーロッパ、そして世界経済をどう変えたか」(2023年12月3日)
  • ジョセフ・ヒース「アイデンティティ・ポリティクスはナショナリズムに似ている」(2023年11月26日)

    年をとるにつれ、周りの人が覚えていないことを思い出せる機会が増えていく。私がアイデンティティ・ポリティクスを巡る昨今の議論を真面目に受け取る気になれない理由の1つはこれである。私は既に同じことを経験してしまっているのだ。この映画は前に見たことがあるし、結末だって知ってる。 言い換えれば、私は1990年代のことを生き生きと思い出せるのだ。実際、私は90年代からこの仕事に就いているが、全く同じ考えについて(提示の仕方まで全く同じであることも多い)、人々がどれほどの熱量で議論していたかを覚えている。マキシム誌のような90年代後半の文化製品を取り上げて、「なんてこった、こいつらはセクシストだったんだ」と言ったり、「となりのサインフェルド」 [1]訳注:アメリカの国民的なコメディドラマ。 のジョークの一部には「問題がある」と不満を述べたりする若者を見るのは、愉快であるとともにゾッとする経験だ。若者は

    ジョセフ・ヒース「アイデンティティ・ポリティクスはナショナリズムに似ている」(2023年11月26日)
  • ノア・スミス「1997年から日本経済がどれほど不調だったか」(2023年11月26日)

    通説では,1990年にかの不動産バブルがはじけてから日は「失われた○十年」に苦しんできたという話になっている.実のところ,一人あたり GDP を見ると,他の豊かな国々にくらべて日の実績が見劣りしはじめた起点は1990年ではなく1997年に思える.97年といえば,アジア金融危機のあった頃だ. この「失われた○十年」論に対して典型的に向けられる反論では,こう語られる――日が停滞しているように見えるのは,大半が人口の高齢化によるものであって,実際の生産性で見ると日は2000年頃から問題なくやっている.新しく出た Fernandez-Villaverde, Ventura, & Yao の論文は,こう主張している: 多くの先進諸国では,この数十年で,高齢化にともなって,一人あたり GDP成長と労働年齢の成人一人あたり GDP 成長のちがいは大きくなってきている.日のように一人あたり GD

    ノア・スミス「1997年から日本経済がどれほど不調だったか」(2023年11月26日)
  • ポール・ローマー「利上げは頭がおかしい」(2023年10月26日)

    ブルームバーグ通信での「FRBは何をすべきか?」というインタビュー(ここでは記事になっている)で、私は以下のように答えた。 「利上げは頭がおかしい」 これは文字通り受け取っていただきたい。 事実はいかなる時も理論に勝る 私が最初に言及したのは、起こってきた出来事を誰も予測できなかった事実だ。インフレは、認知できる雇用の減少やGDPを低下させずに、劇的に低下した。我々が今できる最善のことは、事実に特段の注意を払いながら、暗中模索を続けることだ。最悪の対応は、事実と矛盾している教科書的分析への依存に回帰することだろう。 事実は何を示しているのか? インフレの低下水準と低下速度の両方から、インフレ率が目標水準の2%に、2、3ヶ月以内に達する可能性がある。 もし、FRBが目標水準での安定を真剣に考慮するなら、今すぐにでもインフレの低下ペースを緩める必要がある。 不確実性についてはどうだろうか? た

    ポール・ローマー「利上げは頭がおかしい」(2023年10月26日)
  • マーク・コヤマ「反ユダヤ主義の制度的基盤」(2019年3月21日)

    欧米では、再び反ユダヤ主義が政治の主流になりつつある。反ユダヤ主義は、根的に誤解されている。それは、人種差別の単なる一形態ではない。 The Institutional Foundations of Antisemitism by Mark Koyama Mar 21, 2019· 欧米では、再び反ユダヤ主義が政治の主流になりつつある。反ユダヤ主義は、根的に誤解されている。それは、人種差別の単なる一形態ではない。ジェレミー・コービンは、反ユダヤ主義主義者だと寄せられた批判に対して、「私は、あらゆる形態の人種差別を告発することに全生涯を捧げてきました」と反論している。しかしながらむろん、コービンは少なくとも反ユダヤ主義を幇助している(彼自身が、反ユダヤ主義的な偏見を持っている証拠もある――こちらを参照)。 なぜ、反ユダヤ主義は、他の人種差別と違っているのだろう? そして、反ユダヤ主義を、

    マーク・コヤマ「反ユダヤ主義の制度的基盤」(2019年3月21日)
  • ノア・スミス「BRICSなんてないさBRICSなんてウソさ」(2023年8月27日)

    “Meet the Potters” by Spielbrick Films is licensed under CC BY 2.0. 反 NATO じゃないし,ドルにとってかわりそうにもないし,世界の経済成長を左右することもなさそう 中国で景気低迷がはじまっていて,これは長引きそうだ.それでも,西洋の報道では,中国が自分の支配下にある新しい国際機関をつうじて世界への影響力を強化しようと試みているという警告が伝えられてる――影響力どころか,「世界支配だってなきにしもあらず」みたいな調子だ.『フィナンシャル・タイムズ』の James Kynge はこう書いてる: 中国が描く青写真でかなめとなっているのは,発展途上国に対するみずからの指導力をゆるぎなく制度化することだ.その手段は,中国主導のさまざまな諸国家グループを形成し,拡張し,そこに資金提供することだ.(…)この戦略の目的は,大きく分けて

    ノア・スミス「BRICSなんてないさBRICSなんてウソさ」(2023年8月27日)
  • ジョセフ・ヒース「アメリカの多文化主義は矛盾を抱え込んでいる」(2023年9月23日)

    Multinational culture isometric composition with people of different races and nationalities in folk costumes vector illustration しばらくアメリカに在住していたが、人種的正義を求める闘いで公理となっているものは、現実的な解決策となっておらず、逆に人種間の対立を世代をまたいで再生産してしまっていると思った。これをアメリカリベラルは理解できておらず、多くの逆効果(マイノリティ・グループの一部を共和党の掌中に追いやっている等)を生んでいる。このエントリは、そう確信するに至った分析を極めて簡潔にまとめるのを目的にしている。他の場所や、今後のエントリで、この立場を裏付ける様々な論拠を示す予定だが、今回はひとまず、この私の見解がどのようなものか知ってもらうために、分かりや

    ジョセフ・ヒース「アメリカの多文化主義は矛盾を抱え込んでいる」(2023年9月23日)
    nagaichi
    nagaichi 2023/10/03
    これはあかんでしょ。なんで「黒人コミュニティ」という大きなくくりで、「統一された一連の要求」を持たなければならないのか。多文化主義どころかむしろ逆じゃん。単純化された構図を観念で押しつけてるだけ。
  • ノア・スミス「実際のところ日本はどれくらい同質なの?(再投稿)」(2023年8月1日)

    再投稿のまえおき――日に(また)向かう空の便で,今日はトランジットにいる.そこで,このサブスタック初期に書いた日関連の記事をひとつ再投稿しよう.移民流入ブームから観光ブームのあいだに,近年,日はずっと国際的になっている.とくに東京と京都がそうだ.ただ,世の中の人たちが思っているほど日が同質だったことは一度もない.「日はなんらかの意味で人種的に純粋で,外国人嫌いで,閉鎖的な国だ」という考えに立脚して日は同質だと捉える見解は,どれもずいぶんな戯言だ.今回も,そういう考えを抱いている人を見かけても訂正してあげない方がいいかもしれない.ホントのことを知っちゃったら,日に行きたがる人がさらに増えちゃうかもしれないからね! それは「同質」の定義しだいだね もうね,あともう一度でも「日は同質な社会だ」とか聞かされたら,憤慨するままに一記事を書いちゃうよ.というか,これがその記事か. ア

    ノア・スミス「実際のところ日本はどれくらい同質なの?(再投稿)」(2023年8月1日)
  • ノア・スミス「いろんな経済学の派閥を採点してみると」(2023年7月13日)

    2020年からのインフレを正しく理解したのは誰だろう? パンデミック後に高まったインフレを鎮める戦いは着々と進んでいる.FRB が実際に目標に見据えているものにとても近い数値であるコアインフレ率は,前月との比較で 2% にまで下がっている: コアインフレ率は少しばかり上げもどすだろうけれど,それでも,他のどのインフレ指標を見ても,正しい方向に向かっている.というか,モノは先月よりも安くなってるし,サービス価格のインフレ率も下降傾向にある.最新の賃料を示す各種の数値を見ても,サービス価格は先月より下がってきてる.インフレをはかる各種の数値のなかでも外れ値に比較的に影響されにくい数値を見ても,そのすべてが同じ傾向を示している.基的にすべてのインフレ数値が下に向かっているのを示す表を載せておこう.どの数値も,FRB の 2% インフレ目標に近づいてきている: 2020年以前のような低インフレで

    ノア・スミス「いろんな経済学の派閥を採点してみると」(2023年7月13日)
  • ノア・スミス「脱成長:いらないよそんなの」(2023年5月24日)

    貧困と衰退を称えてみたって環境や貧しい人たちの助けになんてならない 1年半まえ,「脱成長論はろくでもないってみんなも気づきつつある」ってタイトルの記事を書いた〔日語版〕.あの頃,脱成長運動はアメリカでちょっとだけ注目を集めつつあった.気候変動に対抗する主要な行動をすすめようとする人々の後押しの一環としてだ.でも,エズラ・クライン,ブランコ・ミラノヴィッチ,ケルシー・パイパーといった著作家たちが意見を言葉にして,この考えを批判した.要点をかいつまんでいうと: クラインの指摘――〔脱成長で求められる〕生活水準の大幅な低下は,豊かな国々では政治的に受け入れられそうにない. ミラノヴィッチは次の点を論じた――世界規模で意味のある脱成長が実現されるには,豊かな国々をこえて運動が広まらないといけない.他方で,脱成長のためには,貧しい国々が貧困から抜け出すのを止めなくてはならない.これは,政治的に実現

    ノア・スミス「脱成長:いらないよそんなの」(2023年5月24日)
    nagaichi
    nagaichi 2023/09/06
    俺は進歩主義と科学が左翼にとって不可分な要素だとみなしているので、「脱成長」とか「江戸時代に帰れ」とか言ってる人たちが左翼的だとは考えていない。あるべき進歩を阻害するから資本主義は克服されるべきなので
  • ノア・スミス「うん,もちろん TikTok は禁止すべきだよ」(2023年3月20日)

    武器に転用された相互依存を減らす トランプが試みて失敗したことを,いまバイデンと議会が試みている:中国企業が所有している動画アプリ TikTok の強制的な禁止だ.親会社の ByteDance が同アプリをアメリカ企業に売却しないかぎり,アメリカ国内での運営を強制的に停止しようと,バイデンたちは試みている.これには理由が2つある.そして,そのどちらも,「アメリカの子供たちの注意力が下がるのを防ぎましょう」とか「アメリカ企業を競争から救いましょう」といった話と関係がない. TikTok禁止に動いている理由は次の点にある: TikTokアメリカ人ユーザーたちに関するデータを中国共産党に送信していて, しかもTikTok はおそらく中国寄りの検閲を受けており,アメリカ人ユーザーたちが中国共産党のさまざまな目標を支持するように誘導しようと試みている. ごく簡潔に,それぞれの理由について話そう.

    ノア・スミス「うん,もちろん TikTok は禁止すべきだよ」(2023年3月20日)
  • アンドルー・ポター「インテリは穿った見方をするあまり、ウクライナ情勢で奇怪なことを言ってしまう」(2022年10月6日)

    イーロン・マスクが、数日の間ツイッターの主役となるのは、お馴染みの光景だ。月曜日、マスクは、「ウクライナロシアの平和」と称する大構想をツイートし、いつもの光景が展開された。彼は、ロシアによるウクライナの併合地域での国連の監督下での投票の実施、クリミアの「正式なロシアの領土」への承認、ウクライナの「中立」国化などを盛り込んだ提唱を行った。 このマスクによる和平案は、当然のことながら素晴らしい外交手腕と称賛されず、ツイッター上で執拗な批判に晒された。そこで、現世で最も裕福なこの男性は、自分の提唱をオンライン投票にかけて賛否を問うた。結果、60対40という大差で否決された。実際、この騒動の終日になって、マスクの構想を強く支持していたインターネット論壇は、2つだけになっていた。(ロシア政府に買収されているわけでもないのに)ロシア政府に同調している人々。そして、特異な主張(「核戦争を避けねばならな

    アンドルー・ポター「インテリは穿った見方をするあまり、ウクライナ情勢で奇怪なことを言ってしまう」(2022年10月6日)
  • ニック・ロウ 「政府による借金の返済(国債の償還)に伴う『正のフィードバック・ループ』と『負のフィードバック・ループ』」(2010年5月4日)

    この世の中には、二通りの国がある。お金(自国通貨)を刷って政府の借金を返す(国債を償還する)という手が使える国と、その手が使えない国である。カナダは前者の「使える国」であり、(ユーロを導入している)ギリシャは後者の「使えない国」だ。 どちらのタイプの国も借金を抱え過ぎてしまう(国債を発行し過ぎてしまう)と、トラブルに見舞われてしまう可能性がある。とは言え、「使える国」と「使えない国」では、見舞われるトラブルの質に大きな違いがある。「使える国」が見舞われるのは、「負のフィードバック」型のトラブル。その一方で、「使えない国」が見舞われるのは、「正のフィードバック」型のトラブル。何かよくないことが起きると、「正のフィードバック」は「負のフィードバック」よりもまずい結果を生むのが常である(反対に何かいいことが起きると、「正のフィードバック」は「負のフィードバック」よりも好ましい結果を生むのが常であ

    ニック・ロウ 「政府による借金の返済(国債の償還)に伴う『正のフィードバック・ループ』と『負のフィードバック・ループ』」(2010年5月4日)
  • ニック・ロウ 「ところで、『政府の予算』と『家計の予算』ってどこがどう違うの?」(2017年10月27日)

    おそらくあなたも目にしたことがあるだろう。 経済学に疎い素人が「政府は、家計と同じように、収入の範囲内で暮らさなくちゃいけない」みたいな発言を口にしているのを。そして、経済学者がその発言主を指さして嘲笑し、「そんなのは誤謬だ」と断罪しているのを。 さて、質問だ。「政府の予算」と「家計の予算」ってどこがどう違うんだろう? その違いって重要なんだろうか? これらの問いに私なりの回答を寄せるのが今回のエントリーの目的だ。「教育的な」側面を持つエントリーといっていい。 「政府の予算」と「家計の予算」を分(わ)かつとされる違いのうちで、質的にも量的にも重要な意味を持つ違いって果たしてあるんだろうか? 私にはその点が明らかじゃないのだ。 1. 政府は、強制力を行使して(あるいは、強制力を行使する可能性をちらつかせて)収入(税収)を増やすことができる。家計は、そうはできない。 この違いは、政治絡みで重要

    ニック・ロウ 「ところで、『政府の予算』と『家計の予算』ってどこがどう違うの?」(2017年10月27日)
  • ノア・スミス「終末論者にならないようにね」(2023年2月22日)

    このところ,メディアでさかんに論議されているものといえば,アメリカに押し寄せてる十代の不幸の原因はいったいなんなのかってテーマだ.先日,『ワシントンポスト』記者のテイラー・ローレンツが連続ツイートでこう論じていた――いま十代の子たちが不幸せになっている主な理由は,単純に,自分たちを取り巻く世界が「地獄めいた場所」だと彼らが認識しているからにすぎないんだそうだ: きらびやかな悲観論は,なんの役にも立たないよ このところ,メディアでさかんに論議されているものといえば,アメリカに押し寄せてる十代の不幸の原因はいったいなんなのかってテーマだ.先日,『ワシントンポスト』記者のテイラー・ローレンツが連続ツイートでこう論じていた――いま十代の子たちが不幸せになっている主な理由は,単純に,自分たちを取り巻く世界が「地獄めいた場所」だと彼らが認識しているからにすぎないんだそうだ: タイラー・ローレンツ:みん

    ノア・スミス「終末論者にならないようにね」(2023年2月22日)
  • ノア・スミス「バイデノミクスの現状」(2023年2月9日)

    “Joe Biden February 2020 crop” by Gage Skidmore from Peoria, Arizona, CC BY-SA 2.0. 今週バイデンが行った一般教書演説を聞いていて,「かなりいいじゃん」と思った.演説の中身は,文化戦争やら外交問題やらではなく経済政策にだいぶ絞られていた.これもいい点だと思う.いまは,争いよりも豊かさにもうちょっと関心を注いだ方が,アメリカ社会は健全になるだろう.ともあれ,あの一般教書演説ってやつは,いつも2つのことのバランスをとっているところがある.一方には,経済のいいニュースの喧伝があって,こちらは大統領の手柄ということでその評判を高める.もっとも,そういういい結果への大統領の関与はせいぜい部分的でしかないんだけどね.そして,もう一方には,来年に向けた政策の優先事項の列挙がある.この2つのバランスをとって演説ができあがって

    ノア・スミス「バイデノミクスの現状」(2023年2月9日)