追想 風の子学園事件 兵庫県支部 渡 部 吉 泰 風の子学園事件を想うと、弁護士にとって事件とは何だろうと考える。 一九九一年七月二八日、広島県三原市沖に浮かぶ小さな島、小佐木島にあった「風の子学園」という民間「教育」施設内に置かれたコンテナに監禁された少年と少女二名が、熱射病により死亡するという衝撃的な事件が起きた。これが風の子学園事件のはじまりであった。 事件が起きた一年後、私たちは、死亡した少年の両親から委任を受けて、翌年八月四日姫路市を被告として国賠訴訟を提起した。私たちの主張の概要は、姫路市教育委員会及び少年が通っていた中学校が主導となって、少年を「風の子学園」に入園させたものであるが、同学園の実態は、教育施設とは名ばかりで、正に虐待施設であり、よって、姫路市は少年に死について法的責任を負うべきであるというものであった。 一審神戸地方裁判所姫路支部は、一九九七年一一月一七日原告