普段はこの手の本はお奨めしないのですが、戦場で死と向き合う男が、故郷に置いてきた妊娠中の妻と幼い息子を思い、やり取りする手紙をまとめたこの本が、凄く訴えかけてくるものが強かったもので。 本来であればネタバレをするべきではありませんが、この本は結末を知ってから読むべきだと思います。手紙の出し手である石田光治少尉は、日中事変へと駆り出された挙句、遠い戦地で戦死してしまいます。 死を悟った石田少尉の悲痛で、それでいて、身を案ずる妻を逆に勇気付けようとする深い愛情には、もちろん心を打たれます。読み進めるだけで、物語が死へと収斂していくことが分かっていながら、ここまで字の温もりを感じさせる強さを感じ、引き込まれるというよりは、真っ白になります。 二度読んでください。そも、石田少尉は戦争の中にあって自らの命を危険に晒し、また、苛烈を極め、戦闘が拡大し激しくなっていく中で失っていく戦友、戦地を守る責任感
一般入試 CD 日程。 AB 日程というのが1月29日30日にあって、その合否発表のあとに、2週間ほどおいて次の入試がある。 2月あたまが私学の一般入試の集中時期である。 そのときの合否の発表がもうほぼ終わっている。 2月中旬に行われるこの CD 日程は、さきに第一志望校の受験に失敗した受験生たちの「敗者復活戦」である。 すでに第一次志望校に合格したものは、出願はしたが、実際に受験には来ない。 だから、試験場の座席はけっこう「歯抜け」状態になるのがふつうである。 今年はその「歯抜け度」が小さい。 入学センターの諸君とこの「歯抜け度」の意味について考える。 あれこれ考えたが、やっぱりよくわからない。 この事態を説明する可能性として、いちばん妥当なのは、上位校が合格者を絞り込んできたせいで、現段階でまだ合格通知を手にしていない受験生がかなり多数残っていて、かつ本学が「抑え」としてそれなりに高い
自殺と戦争と共同体 内田先生が「Twitter と自殺について」というブログ記事を書いていた タイトルは釣りっぽい。「Twitterで自殺多発?」みたいな噺かと思ってみたら、twitterの話と自殺の話は無関係に列挙されていた。 さて。自殺予備軍のエリート幹部候補生である私として、日本の自殺分析のお話は少々気になるところだ。 要旨 内田先生の自殺の話は、こんな筋だった 1:デュルケームの古典研究をまとめる 結果的には、「気候が暖かいところに住み、儀礼的な宗教を信仰し、大家族の一員であるような人間」はめったに自殺せず、「寒くて、厳しい宗教的緊張が強いられ、単身者であるような人間」は自殺しやすいということになる。 納得のゆく結論である。
2002年、ペンタゴンは、冷戦終結以降、最大規模の軍事作戦演習を行った。イランへの攻撃を想定した、「ミレニアムチャレンジ」と名付けられたこの演習は、情報化、ネットワーク化の行き届いた、最新装備の米軍が無敵であることを証明するための演習だったはずなのに、時代おくれの装備を与えられた「仮想イラン」軍に、「仮想米軍」は歯がたたなかった。 ポール・バン・ライパー退役中将が率いた「仮想イラン」軍は、ことごとく米軍の行く手を遮ることに成功した。 ペルシャ湾岸に入った米艦隊は、イラン軍の自爆船、対艦巡航ミサイルによる攻撃を受け、米戦艦のほぼ半数が沈められるか、作戦遂行ができない状態に追い込まれた。これはパール・ハーバー以来の大失態だった。 情報の伽藍に圧倒される 「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」という本に登場するこのエピソードの主役、ポール・ヴァン・ライパー退役海兵隊中将がどうして強か
2009年08月15日14:30 カテゴリ書評/画評/品評Love それを選んでしまわぬために - 書評 - それでも、日本人は「戦争」を選んだ 朝日出版社鈴木様より献本御礼。 それでも、日本人は「戦争」を選んだ 加藤陽子 これは、すごい。 はじめて「腑に落ちる」日本近代史を読ませていただいた。 なぜ、それでも日本人が、いや二十世紀人たちが戦争を選んだのかを、やっと納得することができた。 そして、わかった。 どうしたら戦争を選ばずにすむのかが。 本書「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」は、歴史学者である著者が、中高年ではなく中高生とともに、日清戦争から太平洋戦争に至る戦争の世紀を一緒に学んだ記録。 それでも、日本人は「戦争」を選んだ 加藤陽子 目次より 序章 日本近現代史を考える 1章 日清戦争 - 「侵略・被侵略」では見えてこないもの 2章 日露戦争 - 朝鮮か満州か、それが問題
2009年04月16日06:00 カテゴリ書評/画評/品評 事実は小説よりも... - 画評 - テラ・ルネッサンス I インフィニティ木戸様より献本御礼。 テラ・ルネッサンス I 田原実作 / 西原大太郎画 正直、本を読み慣れた人であればあるほどカバーを見て引くだろう。 なにしろ「『心を育てる』感動コミック」である。 なんて文部省推薦漫画的な。 しかし、ここに描かれているのは、本当のことなのである。くさい「芝居」ではないのだ。 本作「テラ・ルネッサンス I」は、NPOテラ・ルネッサンスの理事長、鬼丸雅也が見た、少年兵の実態。その実態を見れば、「文部省推薦漫画的」から来る照れは地雷を踏んだ足のようにふっとんでしまう。 現在世界には 確認されているだけで、18歳未満の子ども兵が約30万人存在しています。 この子ども兵たちは、「単なる」「未成年の」「軍人」ではない。 それ以前に、「人」として扱
というわけで、人権が自明であるとのid:hokusyu氏の意見に対して、id:inumash氏が「人権」っていつから信仰の対象になったんだっけ? - 想像力はベッドルームと路上からというエントリにて人権思想を自明のものとしてその主張の強度に依存するのではなく、むしろ人権の意味から問いなおさなければならないと主張をしている。 対する、id:hokusyu氏は本当の本当に大切なことには、理由があってはいけない - 過ぎ去ろうとしない過去というエントリにて、自明でなければならないし、そうでなければ人権が無視されてしまうというような主張を行っている。 うひゃあ、毎度おなじみ人権真理教でつかwwww 未だに「自明」だの「理由があってはいけない」だの言ってるバカがいるのかwww まあ、いるだろーなwwww しっかしこんなもの、両者の意見を紹介しているこのエントリのタイトルが全てを物語ってるじゃねーのw
戦争という「合法的な享楽装置」 共同体を維持するためにその閉塞から出る不満を外部へ転換させる方法はいまでも「大衆のガス抜き」として有用な政治的な方法である。その意味で、戦争は祭り以上の「合法的な享楽装置」の役割を担ってきたのではないだろうか。 いまでもスポーツで思い入れの強いチームの試合は血がたぎり、熱狂する。それが自らの命をかけ、コミュニティの存亡をかけて戦うとなれば、これほどの興奮があるだろうか。戦争は「合法的な享楽装置」として作動してきた。そしてそれによってまた共同体の秩序を維持するよう働いた。封建的な階級性や、男尊女卑などの社会秩序の維持においても、戦争は重要な社会の一部であっただろう。 戦争の終わりと祭り化した日常 それが一変したのは近代以降だ。科学技術の発展によって、武器は強力な「兵器」にかわり、そして巨大な暴力の集中化は国家を生み出し、戦争は国家間の戦闘となった。そして戦士は
2008年04月09日18:30 カテゴリ書評/画評/品評SciTech ESSってなに? - 書評に代えて - 生態系ってなに? タカ派はハト派より強そうだ。マッチョはウィンプより強そうだ。 なのになぜ世の中はタカ派やマッチョばかりにならないのだろうか。 それに答えてくれるのが、Evolutionarily stable strategy = ESS(進化的安定戦略 - Wikipedia)だ。 生態系ってなに? 江崎保男 見てのとおりWikipediaにも日英双方のページがあるのだけど、どちらもわかりやすいものとは言えない。今まで見つけた解説の中で一番わかりやすいものが「生態系ってなに?」にあったので紹介する次第だ。 P.135 そこで、自然淘汰に関する「弱肉強食」のイメージの払拭にとりかかりましょう。自然淘汰は「強いものが生き残る」というイメージがありますが、たとえば、進化の上で闘争
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