長谷川亮一『「皇国史観」という問題-15年戦争時における文部省の修史事業と思想統制政策』 (白澤社2008年) 弱冠30歳だからテーマの掘り下げ方に少しは甘さがあると思っていたら、なかなかどうして問題意識、論理構成ともにカチッとしたものがあり、長谷川亮一は今後の研究成果を期待するに十分な現代史研究者である。先日も福岡安都子さんという1977年生まれの東大法学部助手の『国家・教会・自由-スピノザとホッブズの旧約テクスト解釈を巡る対抗』(東京大学出版会7600円)という500ページの大著を手に入れたのだが、この女性がスピノザの生地・オランダに留学し、スピノザの原語であるラテン語をふんだんに引用(駆使)し、原典資料のあたり方も半端ではない。問題構成もしっかりしている。研究者だから当たり前といえば当たり前だけれども、この手の分野を専攻する若手研究者の、資料にあたる勉強家振りというか、エネルギーとい