日本の民衆や労働者がたどってきた悲惨な歴史をつづった書。というよりか、なまなましい日本人の父祖の生活や実態が間近に感じられる名著である。 むかし宮本常一の『生業の歴史』(未来社)にも歴史の教科書にすべきだと書いたが、まさしくこの本も歴史の教科書にとりあげられるべき内容の本である。政治屋や国家の歴史なんていらない。民衆はどう生きてきたのかとリアルにわかる歴史書のほうがもっと私たちのためになるものである。 私たちはなぜか労働や世間の実態というものを知らない。学校に隔離されて世間の実態を知らない。そして社会に出て労働の世界に面喰い、それでも世間の実態やなりたちが理解できない。 私たちはこの世間の実態というものが空白のまま、社会につき落とされるのである。だから私はやみくもに世間や労働社会の実態を知りたいと労働界をうろうろしてみたのだが、おそらくはこの本のような知識を探していたのだろうと思う。 この