- 書評 『アジア主義 その先の近代へ』 中島岳志著 潮出版社 定価1900円+税 「思想としてのアジア主義」の可能性 アジア主義とは国家を超えたアジアの連帯を模索する戦前日本の思想的営みと実践のことだが、日本思想史においては、これほど罵倒にみまれた対象は他にはない。なぜなら、連帯と解放というスローガンが、大東亜戦争という最悪の結果を招いたからだ。しかし、日本の未来はアジアとの友好的な連帯なくしてあり得ない以上、その思索の軌跡を尋ねることは必要不可欠だ。どのようにアジアを眼差し、何に躓いたのか。その精査によって未来への前進は可能になる。アジア主義の限界と挫折を腑分けし、可能性を掬い上げる本書は、その最良の導きになろう。 出発点は西欧列強の帝国主義の「覇道」を打破し、アジアの連帯という「王道」の確立だ。しかし王道を掲げる連帯には、常に日本の帝国主義という「覇道」が深く影を落とす。支援は介入と