岩波書店 2004年 本文が100ページちょっとの本であるが(それに10ページ以上の訳者解説と20ページ弱の参考文書、6ページほどの日本語文献案内がつく。それぞれがとても充実している)、とても内容の濃い本であると思った。 ポストモダン思想は一時の力をもたなくなったとされるけれども、それでも反=近代の思想はいまだに根強いものがある。しかし、わたくし自身は、近代をそんなに悪いものとは思っていない。 批判するひとにとっての近代とは、「科学」であり「産業」なのであり、さらには「進歩」であり「理性」なのであろう。西欧で、そういう進歩への信仰が決定的に失われたのが、第1次世界大戦のときである。その後、ナチズムがあらわれ、ソヴィエトも崩壊した。近代の評判が悪いのはよくわかる。それでもわたくしには近代というものがそんなに悪いと思えないのは、近代とは啓蒙思想に通じる何かなのではないかと思っている点にある。も