ゼミの友人が勧めていた『マルクスの使いみち』(稲葉振一郎・松尾ただす・吉原直毅著、太田出版、2006年)を読んだ。とても面白かった。そして大いに反省させられた。経済学に疎く、かつ左派的価値観を持つ私のような人間が陥りやすい、新古典派経済学に対する食わず嫌い的な偏見を、この本は見事に払拭してくれた。 主な内容は「分析的マルクス主義経済学入門」といったところだろうか。数式を全く使わないため、私のような門外漢にも何とかついていける。同時に他のマルクス主義諸派に対する方法的批判と、左派の立場にとってのミクロ経済学の意義について多く論じられている。 この本を読む前は、私は新古典派経済学の「需給一致の原則」だとか「自己利益最大化を合理的に追究する個人や企業」といった想定を、そのまま新古典派の経済学者が持つ資本主義経済観だと思い込んでいた。だから「権力関係とか人間の非合理性とかを無視する(新古典派)経済