経済危機の歴史政治経済学 ∗ 若田部昌澄 早稲田大学政治経済学部 I. 序論:歴史と政治経済学 「経済学史は政策研究に役立つか」というのがこのフォーラムの問いである。これに対 する報告者の答えはイエスであり、それを証明するのがこの報告の目的である。 通常、経済学者の政策関与はある特定の状況についてどの政策が望ましいかという政策 提言の形をとる。しかし、もちろん政策は真空状態で決まるものではない。政策はどのよ うな政治過程を経てどのように採用されるかについての研究も必要である。 この研究は現在、政治経済学として活発に推進されている。1この報告では、歴史を政治 経済学に加えることで、経済学史が政策研究に不可欠な要素であることを強調したい。政 策研究が政策決定・実施過程の正確な理解を必要とする限り、政策担当者、国民、メディ ア、そして経済学者、エコノミストの思想を理解しなければならない。そして