4324.「言語本能」を超える文化と世界観 きまじめ読書案内:ダニエル・L・エヴェレット著『ピダハン 「言語本能」を 超える文化と世界観』 (屋代通 子訳、みすず書房、2012年、3400円) 得丸公明 1 はじめに:宣教師にキリスト教を捨てさせたピダハン この本はすごい。衝撃的だ。 キリスト教の宣教師として、アマゾンの未開部族にイエスの教えを伝え るた めに出向いた著者は、現地語であるピダハン語をマスターして、ピダハン人と付 き合っていくうちに、だんだん自分自身の信仰に疑問を感 じるようになり、つ いには無神論者になって、妻や子とも別れてしまうという著者の回心がズバリ描 かれているところがすごい。キリスト教に とっての脅威であろう。 また、筆者は、チョムスキーの生成文法論を学んで現地入りし、チョム ス キー流の考えに沿ってピダハン語を研究しているうちに、いつしか文法は人間の 遺伝子に組み