東大入試問題が問いかけるもの 先月行われた2020年度東京大学入学試験で、初日に実施される科目「国語(現代文)」の問題文が大きな話題となった。 「学校教育を媒介に階層構造が再生産される事実が、日本では注目されてこなかった」と始まるこの文章は、要約すると、近代社会は不平等を克服したのではなく、不平等をたくみに隠蔽して、これを正当化する論理を発達させただけである、という趣旨のものである。読者の皆さんも、ぜひ目を通してみてほしい。 現代社会ではたしかに、差別や不平等をなくすための懸命な努力が続けられてきた。まだ道半ばではあるが、私たちはこの「自由な社会」で、各人がその自由の恩恵を享受することを妨げるさまざまな障害――人種、性別、国籍などによる差別――を排除することに努めてきた。 しかしかりに今後、「差別をゆるさない」という意識が徹底的に浸透し、「差別のない社会」が実現したとしても、「個人の能力差