アラン・ド・ボトン『旅する哲学 大人のための旅行術』を読んだ。 以前、同じ著者による『プルーストによる人生改善法』についても取り上げたことがあるが、やはりこの本も面白い。 特に面白いと思ったところだけ取り上げる。 ディオゲネスは「ギリシア人とギリシア人以外という区別の立て方を軽蔑し、『きみの国はどこか』と聞かれると『わたしは世界市民(コスモポリタン)だ』と答えたと伝えられる。」(129頁) よく知られているエピソードだが、引用した。 何々人という聞かれ方、決め付けられ方、断定のされ方、そういったものから逃れるためにディオゲネスはこう答えた。 彼にとって、世界市民とは、「ギリシア人」として区別されることへの抵抗であり、何かに所属することへの抗いだった。 「犬のディオゲネス」とまで言われた人物である。 もし、本当に世界政府が出来たら、その時には、彼は自らを「宇宙市民」と称するのかもしれない。