レビュー 今、男に求められるのは"普通"にしがみつく手を放す勇気 - 『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』 現代において“普通”はもはや有害な思考停止ワード? 2002年に放映された傑作ドラマ『木更津キャッツアイ』で、余命わずかと宣告された主人公・ぶっさんは、"普通"と書かれた野球ボールを心のお守りにしていた。 何か特別なことを成し遂げようとしたり、ここではない非日常を渇望したりしなくても、私たちの生きる日常はすでに"普通に"充足と豊穣に満ちあふれているのだ、という素晴らしいメッセージが、そこには込められていた。 しかし今、世間の男性を苦しめているのは、むしろその"普通"にすらなれないコンプレックスではないだろうか。普通に会社に勤め、普通に恋愛・結婚をして、普通に嫁と子どもを食わせて定年まで働くことは、もはや贅沢な特権になりつつある。もちろん、正社員だけが働き方ではないし、恋愛・結婚