「吉本隆明の世界(中央公論特別編集)」(2012/6/25)は、吉本が亡くなって三ヶ月後に出版されたいわば「追悼号」である。当然生前からある程度は企画されていたものだと思うが、内容は寄稿された追悼文あり、吉本自身の短いエセーと過去の対談がいくつか、吉本を追悼する対談がいくつか集められた雑多なものである。 めずらしいのは「共同幻想論」出版当時、唯一のまとまった批判として提出された山口昌男の「幻想・構造・始原、吉本隆明『共同幻想論』をめぐって」(日本読書新聞、1969年1月13日~3月17日号)が収録されていることである。 その存在については、呉智英も言及しているが詳しい内容には触れていない。 一読して、これもまた苦笑を禁じ得なかった。余談ながら、少し紹介しておくと、冒頭、すでにこう書いている 「ひとあたり読んでみて、よく分からないのにまず驚いた。私にとってこれは最近めずらしい体験である。」