書家の津金孝邦氏のあるエッセイに、大きな書道展の審査会場で今は亡き殿村藍田氏が、字をきちんと書道字典で調べてから書くようにと、周囲に注文をつけていたことを追想するくだりがあった。それはいいかえると、結構が不明瞭な、誤字まがいの書は、審査の段階ですでに審査対象から除外されかねないことを示している。書作者にとって誤字は致命傷であり、それを事前に避けなくてはならないのは基本中の基本。だからこそ殿村氏は改めて注意を喚起したのだろう。 だが、書以外の分野では、確信犯のように、意識的に「誤字」もしくは「偽字」を採り入れて、私たちが慣れ親しんでいる文字に対する既成概念に激しい揺さぶりをかけるアーティストやデザイナーがいる。現代美術では、一九五五年に中国・重慶市に生まれ、現在ニューヨークで活躍中の徐冰がそのひとりである。 国境を越えて世界的な注目を集める徐冰の作品は、これまで日本でもたびたび紹介されてきた
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