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  • 『古代から中世へ』ピーター・ブラウン(山川出版社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「貧者の正義」 ピーター・ブラウンはダブリン出身の歴史家で、現在はプリンストン大学で歴史学を教えている人物だ。邦訳は定評のある『アウグスティヌス』と『古代末期』だが、ぼくは邦訳されていない『身体と社会』(一九八八年)が圧巻だと思う。もう何度読み返したかしれないだ。 古代末期という概念を作りだしたのはブラウンであり、この時代についての『古代末期における社会と聖性』(一九八二年)『古代末期における権力と説得』(一九九二年)、『権威と聖性』(一九九五年)など、どれも深い示唆に富む好著である。書は著作ではなく、一九九八年に訪日した際の講演を集めたものだ。 どれも多くのことを教えられる講演だが、とくに最初の「貧困とリーダーシップ」は興味深い。この講演でブラウンは、後期ローマ社会で、キリスト教の司教が貧困者にケア、それも経済的な配慮をすることが重視された理由を主に四つの観点か

    『古代から中世へ』ピーター・ブラウン(山川出版社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
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    lotus3000 2016/07/17
  • 『マヤ文字解読』 マイケル,コウ (創元社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 『古代マヤ文明』の著者でマヤ学の泰斗であるマイケル・コウがあらわしたマヤ文字解読史である。 古代文字の解読史は面白いに決まっているが、マヤ文字は面白さが倍加する。ヒエログリフと楔形文字は19世紀、線文字Bは20世紀前半に解読されたが、マヤ文字は16世紀から知られていたのに20世紀後半になってやっと解読されたからだ。しかも解読に功績のあった研究者は著者の直接の友人なのである。マヤ文字の解読はわれわれの同時代の出来事なのだ。 解読に四百年もかかったのにはいろいろな理由がある。まずマヤ文字の正確な模写がなかなか出なかったこと。ヒエログリフはナポレオンによって文化財と認められ、遠征軍にしたがった学者と画家による碑文の精密な模写が出版され、ヨーロッパ中で解読を競う体制が整ったが、マヤ学の場合、宣教師によって樹皮紙が徹底的に焚書にされただけでなく、碑文の初期の模写はマヤ文明ユダ

    『マヤ文字解読』 マイケル,コウ (創元社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
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    lotus3000 2015/06/20
    差別意識が発見を遅らせることになった事件。それと現場との対立。
  • 『ナショナリズム-その神話と論理』橋川文三(紀伊國屋書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「日のナショナリズムの源流を探る」 この書評サイトの執筆を引き受けたとき、まずはじめに思い浮かんだのがこのだ。 書はかつて存在した紀伊國屋新書の一冊として、1968年に出版された。以降、版型を変えて復刻され、現在に至っている。 日のナショナリズムを論じる際に欠かすことのできないこの名著は、当時、紀伊國屋書店の嘱託をしていた村上一郎が、橋川文三に依頼して執筆が進められた。村上一郎は、吉隆明や谷川雁らと雑誌『試行』を刊行した作家・文芸評論家で、『北一輝論』や『草莽論』など一連の右翼・ナショナリズム批評でも知られる。彼は1975年、54歳のときに自刃。深刻なうつ病を抱えていたとされる。 ―――右派ロマン主義に心を奪われた村上が、同じく若き日に日浪曼派に熱中した橋川に書かせたナショナリズム論。 あまりにも魅力的な背景を持つ書は、近代日のナショナリズムの源泉を突

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    lotus3000 2014/09/09
    村上一郎と橋川文三。
  • 『国字の位相と展開』 笹原宏之 (三省堂) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 ソシュールが文字を研究対象からはずすと宣言したことに代表されるように、言語学では文字はまま子あつかいされてきた。欧米の言語学の移入からはじまった日の国語学(最近は「日語学」と呼ぶようであるが)もそうである。 言語とはまず音声であり、文字は音声のコピーにすぎなかった。漢字は音声のコピーですらないと考えられていたので、能率を求める近代社会の要請を背景に、無視どころか積極的な排撃の対象となった。いわゆる漢字廃止論である。国語学の世界では長いあいだ漢字廃止論者が一大勢力を誇っていた。 音声に密着したカナ文字については日語表記論として長い研究史がある。中国の漢字については紀元前にさかのぼる漢字学の伝統と二十世紀になって発見された甲骨文字学によって体系的な解明が進んでいる。だが、日で作られた漢字となるとかえりみられることはあまりなかった。 日製の漢字を「国字」というが、

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  • 『遣唐使』東野治之(岩波新書) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 冬の嵐のなかを、長崎県五島列島福江島の三井楽町にある「遣唐使ふるさと館」を訪ねた。平日午前中ということもあり、わたしひとりで「史実を参考にして創作した三井楽オリジナルの映像ソフト「遣唐使ものがたり」」を鑑賞した。パンフレットには、つぎのような説明文があった。「様々な苦難を乗り越え、日の国づくりのために遥か遠い唐の国まで"夢と希望と勇気"を持って旅をした遣唐使たち」「この遣唐使をテーマにした人形アニメーション「遣唐使ものがたり」は、遣唐使が三井楽の柏崎を日最後の地として別れを惜しみつつ旅だったという歴史的史実をもとに創作した三井楽オリジナルの感動のものがたりです」「自らも遣唐使の一員となり、苦楽をともにして唐へと旅をした"空海"をモデルにした留学僧があなたをワクワク、ドキドキ、ハラハラの遣唐使の旅へと誘います」。 「中学・高校の社会や歴史の教科書にも必ずのせらて」い

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  • 『鉄は魔法使い』畠山重篤(小学館) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「好奇心あふれる鉄の巡礼者」 東海道線の小田原の先にある真鶴は、地名は知っていたが訪ねたことはなく、あるとき仕事で行くことになってはじめて駅に降り立った。目的は中川一政美術館の取材で、彼の力強い作品にも感動したが、それと同じくらい驚かされたのは、太平洋に突き出た真鶴半島の豊かな森だった。 半島の背骨にあたる道を先端にむかっていくと、原生林にぶつかり、そこから先は車で行けなくなる。ちなみにその森の入口に中川一政の美術館は建っており、館内の窓から見えるのは緑一色の世界。海辺に来たつもりが、山のなかにさまよい込んだかと思うような思いがけない光景だった。 取材を終え、港に下りて浜の堂に入ったところ、出てきた魚料理がまたおいしいかった。山と海がいちどに楽しめるこんな場所が都心から一時間ちょっとのところにあるのが大発見で、しばらくは会う人ごとに、真鶴って行ったことある?と触れ回

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  • 『地図から消えた島々-幻の日本領と南洋探検隊たち』長谷川亮一(吉川弘文館) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 書では、「日近海のまぼろしの島々について、その〝誕生〟から〝消滅〟までの経緯を追い、それを通して、近代日の「南進」の一側面を見てゆく」。だが、著者、長谷川亮一は、「あとがき」で、「じつのところ、最初からこのような形でまとめることを意図していたわけではない。当初は、日近海の幻の島列伝、といった形でまとめようとしたのだが、登場する人物や実在・架空の島々などが複雑に錯綜しているため、それぞれを切り離してしまうとかえってやりにくい。そのため、なるべく時間的な順序に沿う形で話をまとめてみたのである」と述べている。 書では、西洋史でいう「大航海時代」に「発見」された日近海の島々の話からはじめ、近代国家日が成立していく過程で、「一攫千金を夢見る冒険商人たち」を絡めながら、領域を画定していった様子を描いている。その概略は、つぎのように年代順にまとめられている。「北方の境

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  • 『敗走記』 水木しげる (講談社文庫) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 表題作を含め6編をおさめる戦記漫画短編集だが、どれも読みごたえがあり完成度が高い。貸時代の作品とメジャーになってからの作品が混在しているが、貸時代の作品は描き直されているのですべて細密画風の現在のタッチである。もし水木の戦記ものを1冊だけ読みたいなら書がお勧めである。 「敗走記」 『総員玉砕せよ!』の原型にあたる作品で、「別冊少年マガジン」1970年2月号に掲載。 昭和19年、ニューブリテン島の最前線を守る分隊が爆撃と機銃掃射で全滅してしまう。歩哨に立っていた主人公は助かりもう一人生き残った鈴木とともに30キロ離れた中隊司令部に向かうが、一帯の原住民は連合軍から武器を支給されて日軍と敵対しており敵中を突破するに等しい。 主人公はなんとか中隊にたどりつくが、歓迎されるどころか敵前逃亡罪に問われるという不条理。『総員玉砕せよ!』のエッセンスがここにある。 「ダンピ

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    lotus3000 2010/08/13
  • 『旧約聖書の誕生』加藤隆(筑摩書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「行き届いた旧約入門書」 著者は新約学者だが、この旧約聖書への入門書も懇切丁寧な作りで、聖書への理解を深めるために役立つだろう。旧約聖書の基的な構成、聖典としての確立の状況、ヤハヴェという神の名の呼び方の由来など、基となる事柄はきちんと説明されているし、それぞれの書物ごとにその特徴が要約されていて、わかりやすい。「汽笛一声新橋を」の節で歌われる聖書の順序の記憶方法まで紹介されていて、つい笑ってしまった。 書の特徴は、旧約聖書で語られる物語の順に考察するのではなく、ほぼ成立した時代ごとに紹介しているために、その成立の背景なども一緒に理解できることだろう。「出エジプト記」の後は、イスラエル統一王国時代に成立したとみられる「創世記」について、ヤーヴェ資料を中心に説明される。次の北王国時代の文書として預言者エリヤ、エリシャ、アモス、ホセアについて説明され、ふたたび「創世

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    lotus3000 2010/03/30
  • 『在郷軍人会-良兵良民から赤紙・玉砕へ』藤井忠俊(岩波書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「矛盾に満ちた在郷軍人会の全貌を描き出す」。著者、藤井忠俊は、すでに『国防婦人会-日の丸とカッポウ着』(岩波書店、1985年)や『兵たちの戦争-手紙・日記・体験記を読み解く』(朝日選書、2000年)などの著書があり、民衆の視点で戦争に荷担していく実像を明らかにしてきた。戦争は、一部の軍国主義者が暴走しただけではなく、それに追随した多くの民衆がいたから起こった。それらの民衆に戦争責任がなかったとは言い切れないとともに、民衆がなぜ追随していったのかを検証する必要がある。なぜなら、それらの民衆は、いまのわたしたち同様、「侵略戦争」に荷担していくとは思いもよらなかったにもかかわらず、いつの間にか荷担していったからである。 書の概要は、表紙見返しにある。「「国体明徴運動」を主導し、戦前のファシズム体制を代表する組織としてのイメージが強い在郷軍人会。しかし、その実態はあまり知ら

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    lotus3000 2010/03/09
  • 『漢字廃止で韓国に何が起きたか』 呉善花 (PHP新書) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 幕末から1980年代まで漢字廃止運動という妖怪が日を跋扈していた。戦前は「我が国語文章界が、依然支那の下にへたばり付いて居るとは情けない次第」(上田萬年)というアジア蔑視をともなう近代化ナショナリズムが、戦後は漢字が軍国主義を助長したという左翼の神話(実際は陸軍は漢字削減派だった)が運動のエネルギー源となり、実業界の資金援助を受けてさまざまな実験がおこなわれた(キーボードのJISカナ配列はその名残である)。 1946年に告示された1850字の漢字表が「当用」漢字表と呼ばれたのも、いきなり漢字を全廃すると混乱が起こるので「当面用いる」漢字を決めたということであって、あくまで漢字廃止の一段階にすぎなかった。 当用漢字表の実験によって漢字廃止が不可能だという認識が広まり、1965年に国語審議会は漢字仮名交じり文を認める決定をおこなったが、漢字廃止派はこの決定を正式の文書に

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