→紀伊國屋書店で購入 「貧者の正義」 ピーター・ブラウンはダブリン出身の歴史家で、現在はプリンストン大学で歴史学を教えている人物だ。邦訳は定評のある『アウグスティヌス』と『古代末期』だが、ぼくは邦訳されていない『身体と社会』(一九八八年)が圧巻だと思う。もう何度読み返したかしれない本だ。 古代末期という概念を作りだしたのはブラウンであり、この時代についての『古代末期における社会と聖性』(一九八二年)『古代末期における権力と説得』(一九九二年)、『権威と聖性』(一九九五年)など、どれも深い示唆に富む好著である。本書は著作ではなく、一九九八年に訪日した際の講演を集めたものだ。 どれも多くのことを教えられる講演だが、とくに最初の「貧困とリーダーシップ」は興味深い。この講演でブラウンは、後期ローマ社会で、キリスト教の司教が貧困者にケア、それも経済的な配慮をすることが重視された理由を主に四つの観点か