電車のなか、公園のベンチ、大学の教室、そして国会の本会議中でさえ日本人は気持ちよさそうに居眠りをする。そんな日本独特の睡眠文化をオーストリア生まれの文化人類学者が多面的に分析したのが本書である。 その内容は、日本における睡眠の歴史にはじまり、睡眠習慣の国際比較や居眠りのルールなど多岐にわたるが、なかでも評者が最も興味を引かれたのは睡眠と余暇の関係である。 睡眠は日本人にとって大事な愉楽だが、1970年代に政府が活動的な余暇利用を呼びかけたことがきっかけで、「休日のごろ寝は怠け者のレジャー」とされ、日本人は睡眠を減らし余暇活動に時間をつぎ込むようになったという。そう考えれば、眠るのが目的の睡眠コンサートや月曜朝の通勤電車で気持ちよさげに眠っているサラリーマンの姿などもちゃんと説明がつく。居眠りは不足しがちな睡眠を効果的にとるためのきわめて合理的な活動だったのだ。 これからは私の講義で居眠りし