カナダ・ケベックに見る世界の潮流 メープルシロップとセリーヌ・ディオン。カナダのケベック州と言っても、日本人の多くには縁遠く、このくらいのイメージしか湧いてこないかもしれない。 だが、北米にあってフランス語を唯一の公用語とするこのユニークな社会では、現代世界の潮流を映し出すような興味深い事態が進行中である。 2018年10月。政治の舞台で大きな変化が起きた。 州議会選挙でフランソワ・ルゴー党首率いる「ケベック未来連合」(CAQ)が単独過半数を獲得する地滑り的な大勝利を収め、初めて政権の座についたのである。これは、ケベック現代政治史のこれまでの前提を突き崩す出来事である。 ケベック州首相に就任したフランソワ・ルゴーは、移民受入を20%削減し、ムスリム女性の教員が着用するスカーフを禁じる法律を制定しようとしている。現代世界には、自国優先の保護主義的な経済政策を唱え、他者の宗教に規制を加えようと