鈴鹿医療科学大学の豊田長康学長は、国立大学法人化や新医師臨床研修制度などの科学技術政策による研究力低下を可視化した。経済学などで使われる自然実験という観察研究手法を用いて、政策の対象群と非対象群の大学を比較した。すると国立大学法人化による負の影響が最大となった。研究力を引き下げている可能性がある。 2004年の国家公務員総定員法と大学院重点化に加え、国立大法人化、新医師臨床研修制度の導入、06年の薬学部6年制の導入の4政策の影響を検証した。この前提に04年ごろから日本の研究論文の質と量を掛け合わせた研究力指標が低下しており、その背景には研究者の正味の研究時間と研究者数が減少していることがある。 4政策の対象となっていない早稲田大学などの私立で医学部や薬学部のない総合大学15校と、政策対象となった国立大学を比較した。すると00年から21年で非対象群の私大は1・3倍ほど研究力が伸びているのに対
移民受け入れを支持する人間として,ぼくは懐疑的な人や批判的な人に耳を貸すようにつとめてる.どんな国にも,自らがのぞむならどんな人間でも招き入れる権利がある――あるいは,入国を拒否する権利がある.移民の流入で自分たちの文化が変わってしまうのを人々が心配しているなら,それは完璧に許容されるべき態度だ. ただ,それと同時に,移民流入制限派の人たちは移民受け入れにともなう経済的な害悪をあれこれとたくさん主張している――賃金低下,政府財政への負担,などなど.それでいて,そういう主張はずっと証拠と矛盾しつづけている. たとえば,多くの証拠から,移民流入は――低技能移民の流入ですら――現地生まれの人たちの賃金や雇用の見通しに悪影響を及ぼしていないことが明らかになっている〔日本語版記事〕.最近出た Michael Clemens & Ethan Lewis の論文を見てみると,この研究はとても「きれい」な
2021年2月から始まった公費によるワクチン接種は24年3月で終了した。総接種回数(4月1日時点)は約4億3620万回に上り、国による大規模な予防接種事業は一旦区切りを迎えた。ただ、ワクチンの安全性に対する評価制度には課題もある。厚生労働省は現行制度のままで十分なのか検討を進めている。 厚労省が有識者で作る「副反応検討部会(以下、検討部会)」では、ワクチン接種の安全性を評価するため、重篤な副反応が疑われる事例などを報告するよう医師に求めている。仮に重篤な被害の報告が相次げば、個別の因果関係や頻度などを総合的に判断した上で、安全性評価の観点から注意喚起したり、接種体制の見直しを求めたりする。 医師から報告された事例は、独立行政法人・医薬品医療機器総合機構で専門家が因果関係などを審査し、因果関係が否定できなければ「α」、認められないと「β」、評価不能なら「γ」の三つに分類する。その結果を検討部
というIMF論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「The Pitfalls of Protectionism: Import Substitution vs. Export-Oriented Industrial Policy」で、著者は同基金のReda CherifとFuad Hasanov。 以下はその要旨。 Industrial policies pursued in many developing countries in the 1950s-1970s largely failed while the industrial policies of the Asian Miracles succeeded. We argue that a key factor of success is industrial policy with export orien
人文系大学生〜学部卒の方々を念頭に置いた講演でのスライドです。Enjoy! *書籍:林岳彦著『はじめての統計的因果推論』(岩波書店)の情報はこちら→ https://www.iwanami.co.jp/book/b639904.html
という、トランプ減税(Tax Cuts and Jobs Act=TCJA)の効果を改めて評価したNBER論文をOwen Zidarらが上げている(ungated版へのリンクがあるZidarのページ、プリンストン大の紹介記事)。原題は「Tax Policy and Investment in a Global Economy」で、著者はGabriel Chodorow-Reich(ハーバード大)、Matthew Smith(米財務省)、Owen M. Zidar(プリンストン大)、Eric Zwick(シカゴ大)。 以下はその要旨。 We evaluate the 2017 Tax Cuts and Jobs Act. Combining reduced-form estimates from tax data with a global investment model, we esti
というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Why Survey-Based Subjective Expectations are Meaningful and Important」で、著者はFrancesco D’Acunto(ジョージタウン大)、Michael Weber(シカゴ大)。 以下はその要旨。 For decades, households' subjective expectations elicited via surveys have been considered meaningless because they often differ substantially from the forecasts of professionals and ex-post realizations. In sharp contrast, the literat
というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Sectoral Development Multipliers」で、著者はFrancisco J. Buera(セントルイス・ワシントン大学)、Nicholas Trachter(リッチモンド連銀)。 以下はその要旨。 How should industrial policies be directed to reduce distortions and foster economic development? We study this question in a multi-sector model with technology adoption, where the production of goods and modern technologies features rich ne
というNBER論文が上がっている(H/T Mostly Economics;ungated版)。原題は「Trade War and Peace: U.S.-China Trade and Tariff Risk from 2015–2050」で、著者はGeorge A. Alessandria(ロチェスター大)、Shafaat Y. Khan(シラキュース大)、Armen Khederlarian(ニューヨーク市立大学ハンター校)、Kim J. Ruhl(ウィスコンシン大学マディソン校)、Joseph B. Steinberg(トロント大)。 以下はその要旨。 We use the dynamics of U.S. imports across goods in the period around the U.S.-China trade war with a model of expor
企業を変革するために組織を動かし、人を動かすことは一筋縄ではいきません。 経営コンサルティングファームのマッキンゼーでは、組織変革をどのように成功させているのか。本稿ではマッキンゼーが使っている「4つの鍵」を紹介します。 変革のフレームワーク「インフルエンスモデル」 組織変革のフレームワークと言えば、マッキンゼーの7Sを思い出す方も多いかもしれません。7Sは1980年に経営雑誌の論文で発表されて以来、50年にわたって世界中で組織設計に活用されているフレームワークです。 実はこの7S、組織設計を行うには非常に有用ですが、動的なフレームワークではないため、現在進行形で組織の人々を動かし、変革を推し進めていく際にはあまり使いません。実際の組織変革の中で私たちが活用するフレームワークが、「インフルエンスモデル」と呼ばれるフレームワークです。 営業改革に限らず、組織変革を行うと多くのことが変わります
「896の自治体が消滅する可能性がある」 2014年。 ひとつのレポートが全国の自治体に衝撃を与えた。 自治体の政策にもさまざまな影響を与えた「増田レポート」。 あれから10年。 少子化を乗り越えようとあらがう自治体。 人口減少を受け入れながら、新しい町を作ろうともがく自治体。 それぞれの今を取材した。 論文では、「国立社会保障・人口問題研究所」の日本の将来人口推計を詳しく分析。 着目したのが、20代から30代の女性の人口だ。 この層が2040年までに半数以下になる自治体を抽出した。 この結果、896自治体を「消滅可能性都市」と呼び、人口減少が加速し、最終的には消滅する可能性があると警鐘を鳴らした。 論文は、グループの座長だった増田寛也氏(元総務大臣・現日本郵政社長)の名を取って、「増田レポート」と呼ばれ、当時大きな話題となった。 「消滅可能性都市」は、この年の「新語・流行語大賞」にもノミ
というIMF論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「The Return of Industrial Policy in Data」で、著者はSimon Evenett(ザンクトガレン大学)、Adam Jakubik(IMF)、Fernando Martín(Global Trade Alert)、Michele Ruta(IMF)。 以下はその要旨。 This paper introduces the New Industrial Policy Observatory (NIPO) dataset and documents emergent patterns of policy intervention during 2023 associated with the return of industrial policy. The data show that t
というNBER論文が上がっている。原題は「Societal Aging and its Impact on Singapore」で、著者はCynthia Chen(南カリフォルニア大)、Julian Lim(シンガポール国立大)、Abhijit Visaria(Duke-NUS Medical School*1)、Angelique Chan(同)。これは「世界の長期介護 - himaginary’s diary」で紹介した書籍の一章で、そちらのリンク先では7月時点のWPが読める。 以下はその要旨。 Societal aging is arguably one of our most critical demographic challenges, and Singapore is aging at a much faster rate compared to other countrie
「経済自由化の評価:合成コントロール法による検証」(“Assessing Economic Liberalization Episodes:A Synthetic Control Approach”)――ワーキングペーパー版はこちら(pdf)――と題された論文で、アンドレ・ビルマイヤー(Andreas Billmeier)&トマソ・ナンニチーニ(Tommaso Nannicini)の二人が経済自由化政策の効果を検証している。具体的には、1963年から2005年までの間にあちこちの国で断行された「市場の拡大――とりわけ、(貿易障壁の軽減・撤廃を通じた)市場の開放――を後押しする包括的な改革」が検証の対象となっており、「処置群」たる国々(経済自由化に踏み切った国々)の1人当たりGDPの軌跡と「合成対照群」の1人当たりGDP(処置群たる国々が経済自由化に踏み切らなかったと想定した場合の1人当たり
ChatGPTをはじめとする生成AI(人工知能)の目覚ましい成功は、機械の台頭が労働者にどのような影響をもたらし、最終的に我々の社会をどう変えるのかについて沸騰していた議論にさらに火をくべた。破滅派は、ロボットが人間に取って代わり、人類文明を滅ぼすだろうと予測している。楽観派は、成長に伴う苦しみは避けられないが、乗り越えれば、新たなる知的機械によって我々社会はもっと良くなるだろうと主張している。なんだかだいっても、人類は、過去の技術革命を特に悲惨な結果とせずに、うまく消化してきている。 しかし、歴史から学ぶのは、簡単ではない。AIによる革命は、我々社会に新たな予期せぬストレスをもたらすだろう。現在、技術のシフトのもたらす勝者と敗者について議論されているが、これは重要な側面を欠いている。技術シフト後に社会・政治的な混乱がどれだけ生じるかも重要だ。 この原理の極端な例として、ある特殊な労働者階
Source: Mercer CFA Institute Global Pension Index Note: Index ranks each country in an A-E grading system. (A is best) オランダは現在、年金制度を集団型から個人型へと改革中だが、強固な資産基盤と健全な規制に支えられ、改革後も良好な給付を提供するとリポートは説明している。 しかし、ほとんどの国の年金制度は人口高齢化、政府債務の増加、高インフレによってストレスにさらされており、またギグエコノミー労働者の取り込みなどの課題にも直面している。 マーサーのシニアパートナーでリポートの主執筆者、デービッド・ノックス氏はインタビューで「もはや社会保障や公的年金だけに頼ることはできない」と述べた。 アルゼンチンは調査対象47カ国中最下位、米国は22位だった。オーストラリアは5位、英国は10
■要旨 FRBはインフレ抑制のため金融引き締めに転じ、2022年3月から政策金利であるFF金利の誘導目標水準を順次引き上げ、2023年7月には5.25~5.50%となった。 リーマン・ショック後の量的緩和やコロナ対応でFRBのバランスシートの規模は最大時で9兆ドル近くに膨らんだ。その後、量的引き締めで保有する米国債やMBSを縮小しているが、2023年8月16日時点でなお総資産は8兆ドル余となっている。 市場への資金供給量が拡大した中で政策金利を誘導するため、FRBは準備預金への付利水準を引き上げる等して対応している。この負債サイドの資金調達コストが利上げに伴い急上昇する一方、保有する米国債やMBSは固定利付で低金利のものが大半で、逆鞘が拡大する中、2022年決算で、事実上の債務超過額に相当する繰延資産は188億ドルとなった。 FRBは繰延資産を計上した他、保有する有価証券の評価損も1兆ドル
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