歴史は数々の天才たちの仕事が絡み合って出来上がっている。宮崎駿監督がアニメ産業に起こしたイノヴェーションは、ピクサーのラセター監督を目覚めさせ、巡り巡ってジョブズの復活、iPhoneの誕生、そして世界の音楽産業の再生にまで連なっていく───。 エンタメ産業そして人類の生活を変えたスティーブ・ジョブズの没後十周年を記念する集中連載、第十九弾。 ■ジョン・ラセターと宮崎駿 二〇一四年、宮崎駿がアカデミー名誉賞を受賞した。日本人では黒澤明以来の快挙であり、アニメ監督としては史上初だった。この賞を得るともう他の賞は授与されなくなる、もしくは貰う意味がなくなるとすら言われている。映画界のノーベル賞といっていいかもしれない。 「アニメ史上、この芸術表現に誰よりも貢献した人物がふたりいます。ひとり目がウォルト・ディズニー。その次が宮崎駿さんです」 配給を担当したディズニー社を代表して、レッドカーペットの
ジョン・ラセター氏。ピクサーの新作『Coco』のプレミア上映会で(2017年11月8日撮影)。(c)AFP/VALERIE MACON 【11月22日 AFP】(更新)米ディズニー(Disney)のアニメ部門トップ、ジョン・ラセター(John Lasseter)氏(60)は21日、スタッフに対し望まれていないハグ(抱擁)をしたことで「不快」な思いをさせたと認め、半年間の休職を発表した。 ラセター氏は、ルーカスフィルム(Lucasfilm)の小さな映像制作部門だったピクサー(Pixar)を世界で最も成功を収めたアニメーションスタジオに変身させたことで知られ、『トイ・ストーリー(Toy Story)』と『トイ・ストーリー2(Toy Story 2)』では監督を務めてCGアニメ映画の草分けとなった。 ディズニーからAFPに送付された社内文書で同氏は「望んでいないハグや、いかなる方法や形であれ一線
今さらですがディズニーの『ベイマックス』を見てきましたよ。ええ。 CMや予告編を観たときは「まぁ、ディズニーの子ども向け映画だわな。退屈はしないけど飛び抜けた部分はない75点の答案だわ」と思っていたんですよ。作品で言うと『ライオンキング2』みたいな。 それが妙に評判良いんで見に行ったらズッコケました。限りなく100点に近い答案なんです。 しかも、表現として尖った部分が何もない。驚異的な映像が詰め込まれているわけでも、作家の狂気があるわけでもないし、アッと驚くストーリーテリングもない。なのに、頭からお尻までワクワクする映像が続くんです。 「あっ、日本のクリエイティブ終わったな」 そう感じました。だって、スタッフの中には天才って一人もいないと思うんですよ。秀才の集団。それが勉強に勉強を重ねて、頭に汗をかいて、切磋琢磨して物凄いものを作ってしまった。彼らは「チーム主義」でモノ作りをしている。だっ
今から30年ほど前、コンピュータグラフィックスによるアニメーション映画を作るなどは、とんでもない考えとされていた。実験的なグラフィックスアーティストやアニメーターがちょっとやってみるのならまだしも、大手の映画会社にとっては制作費が膨大にかかるにもかかわらず、人気が見えないリスクの大きなものだったのだ。 その証拠に、ジョン・ラセターはコンピュータアニメーションを制作しようと社内で一生懸命説いて回った揚げ句、ディズニーをクビになった。1983年のことである。ディズニーは、ラセターがそこで働きたいと子供の頃から夢に描いていた会社。せっかく手に入れた理想の職場は、このせいで彼の人生から消えてしまったのだ。 現在、ピクサー・アニメーションのチーフ・クリエーティブ・オフィサーとして名高いラセターにそんな過去があったとは信じられない。だが、このエピソードはクリエーティブな人間は先見の明を持つこと、先例が
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