PR誌「ちくま」7月号より、『美少女美術史』(ちくま学芸文庫、6月刊)の著者、池上英洋氏のエッセイを公開いたします。『官能美術史』『残酷美術史』『美少年美術史』につづく、第4弾『美少女美術史』。この人気シリーズはどのようにして生まれてきたのか? 著者の思考の軌跡が明らかになります。 絵を描くことと読書を趣味としていた母のおかげで、広島の実家には本と画集がたくさんあった。両親とも働いているいわゆる鍵っ子だったのをよいことに、親のいないあいだ、私は手当たり次第に親の本棚をあさることを常としていた。 低学年の頃には、それらを読むというより、ページをパラパラとめくってはただ眺めていた。そのためには絵が多く載っている画集はうってつけで、日が暮れて母が仕事先から帰ってくるまで、古今東西の絵画を意味も分からぬまま見ていた。そのような鑑賞態度でも、お気に入りの作品というものはできるもので、デルヴォーが描く