タグ

ブックマーク / book.asahi.com (16)

  • 問題にされてこなかった生きる意味の問い――『人生の意味の哲学入門』上|じんぶん堂

    記事:春秋社 懇親会での忘れがたい思い出から話は始まる。 書籍情報はこちら 哲学者は「人生の意味」が苦手かもしれない もう十数年も前のことになるけども、ある哲学の学会の懇親会で同席した年長の研究者の人から自分の専門について尋ねられたことがある。そこで私は、さしあたり最近関心があることとして「人生の意味に関心があります」と答えた。どうやらその人は私の返事が冗談だと思ったのか、少し笑って「それは難しい問題ですね。ところで当のご専門は何なんですか」と返してきた……。 これは私にとって忘れがたい思い出だ。自分の研究が馬鹿にされたという感じはない。どちらかと言えば、その思い出には少しユーモラスな感じが伴っている。 サイモン・クリッチリーの『ヨーロッパ大陸の哲学』(佐藤透訳、岩波書店、2004)でも、職業的哲学者にありがちな困惑として、次のような場面が描かれている。 専門職業的な哲学者がパーティで見

    問題にされてこなかった生きる意味の問い――『人生の意味の哲学入門』上|じんぶん堂
  • 文學界新人賞・市川沙央さん 「なにか職業が欲しかった」ままならぬ体と応募生活20年の果てに 「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#1|好書好日

    第128回文學界新人賞 受賞作品「ハンチバック」 親が遺したグループホームで裕福に暮らす重度障害者の井沢釈華。Webライター・Buddhaとして風俗体験記を書いては、その収益を恵まれない家庭へ寄付し、Twitterの裏垢では「普通の人間の女のように子どもを宿して中絶するのが私の夢」と吐きだす。ある日、ヘルパーの田中に裏垢を特定された釈華は、1億5500万円で彼との性交によって妊娠する契約を結ぶ――。 療養生活という名の引きこもり 取材は市川さんが両親と暮らす自宅で行われた。お母さんに案内された部屋で、市川さんと目が合った瞬間、その射貫くような眼差しに気圧された。市川さんは筋疾患先天性ミオパチーという難病により、人工呼吸器を使用しているため、発話に大変な体力を使い、リスクもある。そのため取材も、あらかじめメールで回答をもらい、補足のみ、最小限お話いただく形をとった。 目力の強さはそれが市川さ

    文學界新人賞・市川沙央さん 「なにか職業が欲しかった」ままならぬ体と応募生活20年の果てに 「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#1|好書好日
  • 人類学者デヴィッド・グレーバーさんを悼む 人間の本性、対立超えると信じた 批評家・片岡大右さん寄稿|好書好日

    「負債論」で一石 「当に自由な社会」求めて 世界的に著名な英国在住の米国知識人、デヴィッド・グレーバーが59歳で急逝した。王道を歩む人類学者として、この分野の拠点ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授職にあった彼は、より公正な世界を訴える2011年のウォール街占拠への関与によって、国際的に知られた活動家でもあった。 グレーバーは学問と政治を峻別(しゅんべつ)し、「私をアナキスト人類学者と呼ばないでください」と絶えず求めていたけれど、とはいえ二つの領域はまったく無縁だったのではない。 人類学とは彼にとって、「人間とはなにか、人間社会とはなにか、またはどのようなものでありうるのか」(『負債論』、邦訳16年)を探究する学問だった。マダガスカルのような他なる文化地域に赴いたのも、人間一般の性をより広く深く理解するためにほかならない。 そんな彼が関わったからこそ、ウォール街占拠では、「私た

    人類学者デヴィッド・グレーバーさんを悼む 人間の本性、対立超えると信じた 批評家・片岡大右さん寄稿|好書好日
  • 差別や偏見を隠した「ずるい言葉」を解説 社会学者・森山至貴さんインタビュー|好書好日

    文:篠原諄也 写真:斉藤順子 森山至貴(もりやま・のりたか)社会学者 1982年神奈川県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻助教、早稲田大学文学学術院専任講師を経て、現在、同准教授。専門は、社会学、クィア・スタディーズ。著書に『「ゲイコミュニティ」の社会学』(勁草書房)、『LGBTを読みとく―クィア・スタディーズ入門』(ちくま新書)。 世の中の「ずるい言葉」はどこか差別に通じている ――森山さんは大学で学生さんに「自分が言われてモヤモヤした言葉」をヒアリングしたそうですね。特にどのような基準で選びましたか? 読者にとっての取っ掛かりが多いにしたかったので、特定の学問分野やジャンルの話だけにならないよう心がけました。女性差別やセクシュアルマイノリティ差別の事例だけでなく、血液型、障害者、ひとり親家庭などの話題も取り上げています。 ただ、どんな話題を選んでもやはりどこかで差別

    差別や偏見を隠した「ずるい言葉」を解説 社会学者・森山至貴さんインタビュー|好書好日
  • 「産業革命は黒人奴隷たちの血と汗の結晶である」 歴史学の常識を覆した研究者とは 川北稔さんが解説|じんぶん堂

    記事:筑摩書房 iStock.com/vivalapenler 書籍情報はこちら 「周辺」から世界の歴史を見る 植民地など、「周辺」とされる地域から世界の歴史をみようとする立場は、いわゆる世界システム論をはじめとして、いまではそれほど珍しくはない。そうした見方は、学問的にも市民権を得ているといえる。しかし、ほんの半世紀まえには、そうした立場は、まともな学問とはみられないものでもあった。先頭を切って、この困難な局面を切り開いたひとりが、書の著者エリック・ウィリアムズである。 トリニダード・トバゴの郵便局員の息子として生まれたウィリアムズは、秀才の誉れ高く、周りの期待を背負って、宗主国イギリスのオックスフォード大学に送りこまれた。古典学を専攻した彼は、抜群の成績で卒業したものの、当時のイギリスには─―というより、日をふくむ世界には─―、西洋文明の根源にかかわる古典学、つまりギリシア語やラテ

    「産業革命は黒人奴隷たちの血と汗の結晶である」 歴史学の常識を覆した研究者とは 川北稔さんが解説|じんぶん堂
  • 「〈性〉なる家族」書評 支配という暴力 子どもに重圧|好書好日

    性虐待、DV、セックスレス、不妊治療…。ほとんど表面化することのない家族における性の問題について、カウンセリング経験をもとにさまざまな角度から述べる。『春秋』『ウェブ春秋… 〈性〉なる家族 [著]信田さよ子 稿には性被害に関連する箇所が多く、読まれる方にはご注意いただきたい。 さて著者は子どもの虐待、アルコール依存症、家庭内暴力などの加害者、被害者にカウンセリングをしてきた臨床心理士だ。 このでは、多くの「現場」を見てきたからこそ言える「家族」の闇、支配という名の暴力がどのように人を蝕んでいるかが描かれ、冷静な筆致にして内実は熱い怒りに突き動かされているのがよくわかる。 2年前、刑法が改正され、強姦罪が強制性交罪となった。厳罰化、非親告罪化(被害者の告訴がなくても罪に問える)が柱で、家庭内性虐待の処罰も新設。 にもかかわらず、改正以後も数々の告訴がはねのけられている。そもそも著者が書く

    「〈性〉なる家族」書評 支配という暴力 子どもに重圧|好書好日
  • 書評・最新書評 : 戦後日本のジャズ文化 映画・文学・アングラ マイク・モラスキー著 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

  • 書評・最新書評 : 芸術の言語 [著]ネルソン・グッドマン - 椹木野衣(美術批評家・多摩美術大学教授) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■美学と科学の距離を縮める試み 20世紀の英米を中心とする美学の世界に書が与えた影響には、衝撃的なものがあった。なにせ、序論から「美学の文献の大半に共通する諸見解を片っ端から否定する」とある。しかも、否定される最大のものが、美学を他の分野から独立した学問の一領域として扱うことなのだから。作品への美的な価値判断を行う美術批評からも、冷ややかな距離を取る。「芸術作品は競走馬とはちがって、勝者を決めることが第一目的ではない」というのだ。批評家を名乗る私にとっても穏やかではいられない。 だが、この引用文ひとつとってもわかるように、書は、たんに学術的に厳格なだけではない。随所でウィットに富み、ときに毒舌でさえある。それはおそらく、書が大学で開かれた講義をもとに書かれていることによるのだろう。その叙述は、およそ体系的というよりは、学生という他者を前に教室で自問自答を繰り返す、ソクラテスのような哲

    書評・最新書評 : 芸術の言語 [著]ネルソン・グッドマン - 椹木野衣(美術批評家・多摩美術大学教授) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
  • 書評・最新書評 : ちいさい言語学者の冒険-子どもに学ぶことばの秘密 [著]広瀬友紀 - 野矢茂樹(東京大学教授・哲学) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■彼らは規則正しくまちがえる 「これべたら死む?」と5歳のK太郎が聞く。大丈夫、と母親。「ホント?死まない?」と涙目のK太郎。かわいい。 言葉を覚え始めたばかりの子どもの好プレー・珍プレーが楽しい——というだけのではない。この母親、つまりこのの著者は、言語学の専門家である。だから、勉強にもなり、おおいに感心させられ、感嘆するになっている。 私たちは、言葉というこんな複雑なものを、どうやって学んできたのだろう。もう自分が言葉を学んできた過程はすっかり忘れてしまっている。その不思議の箱を、いままさに言葉を学びつつある目の前の子どもが、開いてくれる。 「死む—死まない」、これをこの母親は死の活用形と呼ぶ。多くの子がこう活用するらしい。なぜか。彼らは、けっして思いつきでめちゃくちゃを口にしているのではない。実は、「規則正しくまちがえている」のである。どんな規則? それを言語学者たる著者は解

    書評・最新書評 : ちいさい言語学者の冒険-子どもに学ぶことばの秘密 [著]広瀬友紀 - 野矢茂樹(東京大学教授・哲学) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2017/05/29
    読んで楽しかったのがすごくわかる書評
  • 「キャラの思考法」書評 時とともに移ろう属性・価値|好書好日

    今日のポピュラー・カルチャーを牽引する「キャラ」概念を、第一人者が徹底分析。漫画・アニメ・ラノベ・ゲーム音楽・芸能など、あらゆるジャンルを横断しながら、未来の展望を切り… キャラの思考法―現代文化論のアップグレード [著]さやわか 現在、漫画やアニメ、ゲームなどのオタク文化を論じる人文書はすでに珍しくなくなったが、書の特徴は、キャラの概念を更新しながら論の枠組みを広げ、小説音楽映画、演劇、芸能などの分野も横断する批評を試みた点である。 書は、伊藤剛の漫画批評が二次創作を視野に入れて提示した「キャラクター/キャラ」論に依拠し、キャラクターが登場人物を指すのに対し、キャラはその人物の特徴を指す。が、ユニークなのは、コミュニケーションによってキャラが書き換え可能になるという動的な見方を提示したことだ。すなわち、キャラが時間的な推移の要素をもつことを重視する。そして、コンテンツ消費が衰退

    「キャラの思考法」書評 時とともに移ろう属性・価値|好書好日
    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2016/03/03
    "本書はコミュニケーションが物語に組み込まれていくという新しい分析のモデルを提示"
  • asahi.com:『リーダーズ英和辞典』 柴田元幸(上) - たいせつな本 - BOOK

    『リーダーズ英和辞典』 柴田元幸(上) [掲載]2007年06月17日 ■「電子版」も座右の書 イメージ喚起力抜群 このは過ぎ去りし青春の書でもなければ、魂のふるさとでもない、まさに日々現実に「たいせつな」である。 英語アメリカ文学に関する情報を提供して飯をっている身として、情報源はまさに「飯の種」である。そして最大の飯の種がこの『リーダーズ英和辞典』なのである。 現代英語を読み、訳し、教える人間たちにとって、『リーダーズ英和辞典』と、その補遺たる『リーダーズ・プラス』が刊行されなかった宇宙は、ほとんどコンピュータが発明されなかった宇宙と同じくらい想像を絶する。 定型句、俗語、流行語、人名・地名、商品・組織名……現代英語を読む上で必須の、だがほかの辞書にはなかなか載っていない情報が満載され、時に「載っていない情報はないのではないか」という錯覚さえ覚える。 記述の内容も、たとえば S

  • 「少女と魔法」書評 日本生まれの強く可愛い魔女|好書好日

    少女と魔法 ガールヒーローはいかに受容されたのか 著者:須川 亜紀子 出版社:NTT出版 ジャンル:社会・時事・政治・行政 日に古くから存在する魔法少女アニメ。詳細なテキスト分析と女性視聴者への取材に基づき、魔法少女アニメがどのようにとらえられ、視聴者をどのようにエンパワメントしたかを探る。… 少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか [著]須川亜紀子 日の魔法少女物アニメ番組は、過去40年以上にもわたり放映されているという。少女メディア文化において、これは世界的にも稀(まれ)なケースだと筆者は指摘する。西欧では魔女は成人女性の力、美、知の象徴であり、それゆえ恐怖の対象として描かれてきた。たとえ善き魔女が描かれても、「奥様は魔女」のように白人美女が定番。だが、日のアニメ世界に輸入されたとき、魔女は少女と合体し、可愛らしく活発な「ガールヒーロー」に変身した。筆者は1960年代か

    「少女と魔法」書評 日本生まれの強く可愛い魔女|好書好日
  • 本の記事 : 浅田彰「構造と力」 マルクスをポップ化 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    難解なはずの現代思想家の理論を明快に整理した『構造と力』が、1983年に出版された。ベストセラーとなり、既存の学問領域にとらわれないニューアカデミズムの「聖典」の一つに。簡単に読めるではないはずなのに、が醸し出す軽やかな雰囲気に多くの人がひかれた。実は、著者の浅田彰がヒントにしたがある。 ◇ 僕が26歳の時のです。当時は現代思想といってもすべてがごた混ぜだったので、それさえ頭に入れておけば知の世界を自由に渉猟できるような明快な地図が描きたかったんですね。 そのためには哲学的な正確さを多少は犠牲にしてもいい。そもそも僕は哲学に興味がなかったんです。マルクスの言ったように、哲学は世界をさまざまに解釈してきた。観念論か唯物論か、解釈はどうにでも変更できる。しかし大切なのは世界を変革することなのだ、と。そのためには、現実に対するクリティーク(批評・批判)や、別の現実を構想するビジョン――そ

    本の記事 : 浅田彰「構造と力」 マルクスをポップ化 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
  • http://book.asahi.com/ebook/master/2012102400001.html

  • 本の記事 : 外村大「朝鮮人強制連行」が示す今に続く差別 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    「『国益』を語る意見にも意味はあるでしょうが、『人間としての共感』を大切にする視点も必要だと思います」と話す外村大さん 植民地、そして戦争――歴史をめぐる対立が東アジアでまた熱を帯びている。先鋭的な政治問題となったテーマに、歴史学は有意義に“介入”できるのか。日近現代史研究者の外村大(とのむらまさる)・東京大学准教授(46)が今春発表した『朝鮮人強制連行』(岩波新書)は、一つの可能性を示している。 1939~45年に帝国日の政策として進められた、朝鮮民衆に対する労務動員。戦争遂行のための施策で、動員された人の多くは内地日の炭鉱に送られた。「強制性は無かった」という主張が一部にある中、外村は書名に「強制連行」を掲げた。 「研究者の基に立ち返ろうと、約6年かけて関連史料を一から読み直してみました。結論として、政策全体として見て強制性があったのは明らかだった」 執筆のきっかけは、編集者か

    本の記事 : 外村大「朝鮮人強制連行」が示す今に続く差別 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
  • 書評・最新書評 : 教養の歴史社会学 [著]宮本直美  | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■「音楽は言葉で語りえない」のはなぜ? クラシック音楽であれポピュラー音楽であれ、音楽について語るのは難しい。作曲や演奏の技法、歌詞、作り手のライフヒストリーについて私たちは確かに饒舌(じょうぜつ)に語り、音楽の優劣について言い争ったりするのだが、最終的には「音楽は言葉では語りえない」という割と平凡な諦念(ていねん)に達してしまうことが少なくない。 書は、私たちが知らず知らずのうちに身につけてしまっているそうした音楽観の社会的「起源」の所在を、19世紀ドイツの文脈に照準することによって教えてくれる。 書の主眼は、後発先進国ドイツの市民層に広がった「教養」の論理とその社会的意味を、同時代の音楽実践と絡み合わせながら分析していく点にある。「教養」も「市民」も「音楽」も、目指されるべき理念とされるが、決して到達することのできない何かであり、明確な規定を持ちえないにもかかわらず、というか、持ち

    書評・最新書評 : 教養の歴史社会学 [著]宮本直美  | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2011/12/06
    “「音楽は言葉では語りえない」という〔……〕音楽観の社会的「起源」の所在を、19世紀ドイツの文脈に照準することによって教えてくれる”
  • 1