冨田勲さんが逝去された。 「この先にどういう世界が出てくるか……アッという、びっくりする世界が出てくると僕は思いますね。これから長生きをする人は楽しみですよ」 僕が初めて冨田勲さんに取材でお会いできたのは数年前のことで、その時に仰っていたこの言葉がとても印象的だった。 初音ミクと総勢約300名のオーケストラと合唱団との共演で宮沢賢治の物語世界を描き出した『イーハトーブ交響曲』の初演を成功させたのが2012年。その時に、すでに年齢は80歳だった。でも、その作品にまつわるインタビューを通して強烈に感じたのは「この人は、今なお、未来に生きている」ということ。それを心の底から楽しみにしている、ということだった。 どんな世界でも、偉業を成し遂げた人、パイオニアとして時代を開拓してきた人ほど、その輝かしい過去を振り返る特権を持っている。冨田勲さんは、まさにそういう人だ。それでも彼は「これからのこと」に