「哲学」とは何のためにあるのか? 「哲学」は何の役に立つのか? こういう問いに対して、私は一貫して「何のためにあるのでもない、何の役にも立たない」と言ってきました。 哲学は、ソクラテスが提唱したように「よく生きる」ためでもなく、多くの哲学者が漠然と信じているように「真理を求める」ためでもないのです。そのほか、「救われる」ためでもなく「人間として向上する」ためでもない。では、と風向きを変えて「それ自体として楽しい」ためと答えれば、嘘になるでしょう。哲学をすることは、通常の意味で、ちっとも楽しくありませんから。 哲学をしないと「死んでしまう」人たち このあたりで、デカルトとかカントとかフッサールとかヴィトゲンシュタインといった「純系の」哲学者を振り返ってみますと、彼らにとって哲学は何のためにあるのか、すなわち、彼らはなぜ哲学をするのか、と問いかけると、もっともらしい答えがすべて嘘であることがは