わたしは志村先生に、ロバート・ラングランズをどう評価なさるかとお尋ねした。すると先生はさらっと、「(ラングランズは)旗振りしただけでしょう」とおっしゃったのだ。ここで急いで補足するが、時代に先駆けて立ち上がり、旗を振るというのは誰にでもできることではない。 フレンケルの今回の講義でも、もしかするととんでもない大間違いかもしれない洞察を述べることへのラングランズの不安が、ヴェイユに宛てた手紙(実質的には論文)への添え書きに、はっきりと表れていた。旗を振ることは、それはそれ自体として、すごいことなのだ。 ラングランズに対する志村先生の評価は、志村先生ご自身の数学との向き合い方、あるいは数学観のようなものと密接に結びついているはずのものである。このコメントは、志村先生の口から出たからこそ凄みがあるのであって、そんじょそこらの者が口にすれば、薄っぺらなセリフにしかならないだろう。 とはいえ、わたし