モーパッサン「首かざり」 今までに書かれたあらゆる小説のなかで最も残酷な物語が「首かざり」である。幼き日の私はこの一篇を読み終えて殆ど作者を憎悪した。人の世の実相を見抜くこと炬(きょ)の如き眼光に敬意を払うこと吝(やぶさ)かではないし、思いも寄らぬ奇抜な筋書きを考えた作者の構想力に感嘆はするものの、これほど惨めな人生を描いて指し示す権利が作者にあるのだろうかと憤りを覚えたのである。 (谷沢永一『人間通になる読書術・実践編』(PHP新書) p.19) これはモーパッサンの「首かざり」(『モーパッサン短編集 II』 (新潮文庫)所収)について書かれたもの。これを読んでから「首かざり」を読んでみたけど、サキの短編みたいな落語のオチみたいな感じで、そんなオチかよって笑っちゃった。谷沢の書いてることに対しては、そんな怒ることないんじゃないの、短編だしって感じ。 夏目漱石は『首飾り』など落ちが目立つ短