□経団連21世紀政策研究所研究主幹 澤昭裕 広島、長崎への原爆投下、後にも先にも核兵器が実際に使用されたのはこの時だけである。その悲惨な結果を目の当たりにした世界中の政府は、いかに不安定な国際政治環境にあっても、核兵器使用という選択肢を行使することには極めて慎重な姿勢を取ってきたし、未来に向けては核兵器ゼロの世界を目指そうとしていることもごく自然なことだろう。では、人類は原子力エネルギー技術をすべて捨て去ろうとしているのだろうか。世界的には、「否」である。 ≪なぜ平和利用の道歩んだか≫ 東京電力福島第1原発の事故後、日本では原子力発電を廃止すべきだとの世論が席巻し、最近ではゼロリスクでないのであれば原子力発電所を動かしてはならないとの司法判断まで現れた。 こうした反原発の主張の中には「被爆国日本は、当然原発に手を染めるべきではない」というロジックも頻繁に登場する。放射性物質による被害の恐ろ