アベノミクスで世の中がどこか浮き足立つ一方で、ハローワーク通いを続ける人たちもいる。彼らの中には、もはや家すらも持たずファストフード店で夜を明かす人たちも少なくない。作家の山藤章一郎氏がリポートする。 * * * 歌舞伎町一番街に足を踏み入れた。個室ビデオで時間をつぶし、午前2時、マクドナルドに入った。3階のイートインスペースで20人ほどが、テーブルに突っ伏している。中高年もいる。チノパンにパーカーの20、30代もいる。足許に、バックパックやキャリー。ワンドリンクで一夜の平安を確保した者たちである。 格子柄のネルシャツの男の左隣りに坐った。汗と体臭が店内の暖気に掻き立てられて右手から臭う。突っ伏したおでこを乗せた手の甲から指先を無数のヒビが割っている。水を使う仕事か。厚労省の発表では、非正規労働者はこの25年で、約1000万人増加した。若年層の12人にひとりが失業し、所得、消費、貯蓄の格差