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ブックマーク / user.keio.ac.jp/~rhotta (120)

  • #2638. 接頭辞 ''dis''-

    接頭辞 dis- について,次の趣旨の質問が寄せられた.動詞に付加された disable や形容詞に付加された dishonest などにみられるように,dis- は反転や否定を意味することが多いが,solve に対して接頭辞が付加された dissolve にはそのような含意が感じられないのはなぜなのか.確かに,基体の原義は語源をひもとけばそれ自体が「溶解する」だったのであり,dis- を付加した語の意味には反転や否定の含意はない. まず,接辞の意味の問題について前提とすべきことは,通常の単語と同様に多くのものが多義性 (polysemy) を有しているということだ.そして,たいていその多義性は1つの原義から意味が派生・展開した結果である.接頭辞 dis- についていえば,確かに主要な意味は「反転」「否定」ほどと思われるが,ソースであるラテン語(およびギリシア語)での同接頭辞の原義は「2つ

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2016/07/17
    "上述の接頭辞の意味は,基体の意味との関係において定まることがあるということだ.もともと基体に「分離」「否定」などの意味が含まれている場合には,接頭辞は事実上その「強調」を表わすものとして機能する"
  • #2637. ''hereby'' の ''here'', ''therewith'' の ''there''

    「#1276. hereby, hereof, thereto, therewith, etc.」 ([2012-10-24-1]) でみたように,「here/there/where + 前置詞」という複合語は,改まったレジスターで「前置詞 + this/that/it/which 」とパラフレーズされるほどの意味を表わす.複合語で2要素を配置する順序が古い英語の総合的な性格 (synthesis) と関係している,ということは言えるとしても,なぜ代名詞を用いて *thisby, *thatwith, *whichfore などとならず,場所の副詞を用いて hereby, therewith, wherefore となるのだろうか. 共時的にいえば,here, there, where などが,来の副詞としてではなく "this/that/which place" ほどの転換名詞として機

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2016/07/16
    "改まったレジスターで「前置詞 + this/that/it/which 」とパラフレーズされるほどの意味" "共時的にいえば,here, there, where などが,本来の副詞としてではなく "this/that/which place" ほどの転換名詞として機能している"
  • #1492. 「ゴールデンウィーク」は和製英語か?

    「#1471. golden を生み出した音韻・形態変化」 ([2013-05-07-1]) の記事で,「ゴールデンウィーク」 (Golden Week) という日語表現に触れたとき,それを和製英語として紹介した.後日,同記事へのコメントがあり,英語教育に関する質疑応答・情報共有サイトの「Is ゴールデンウィーク wasei-eigo?」という記事へのリンクをいただいた(ありがとうございました!).その記事によると,Google Books Ngram Viewer (see [2010-12-25-1]) で検索をかけると,golden week という共起表現が1951年以前に英語に存在したということがわかる(こちらのページを参照).[2010-12-25-1]の記事で述べたように,正直のところ Google Books のコーパスとしての評価はしにくいと考えているが,少なくとも同句

  • #2611. 17世紀中に書き言葉で英語が躍進し,ラテン語が衰退していった理由

    「#1407. 初期近代英語期の3つの問題」 ([2013-03-04-1]) や「#2580. 初期近代英語の国語意識の段階」 ([2016-05-20-1]) の記事で指摘したように,16世紀後半までは,著者はを書くのに英語を用いることに関して多かれ少なかれ apologetic だった.それが,世紀末に近づくと英語に対する自信が感じられるようになり,17世紀には自信をほぼ回復したようにみえる. とはいえ,長い歴史と伝統と威信のあるラテン語が,書き言葉からすぐに駆逐されることはなかった.ラテン語は,聖書や教会関係の権威ある言語として確たる地位を保持していたし,学術の言語としてヨーロッパの国際語でもあった.外国人向けの英文法書ですらラテン語で書かれていたほどである.著者は,このような分野の著作においてその名を後世に残したいと思えば,いまだラテン語で書くのがふさわしいと感じていたのである

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2016/06/20
    グラマー・スクールの英語使用化,『ノヴム・オルガヌム』における古典・人文主義的修辞批判,ピューリタンによるラテン語=カトリックの言語認定,内戦による伝統的教育の破壊
  • #2608. 19世紀以降の分野としての英語史の発展段階

    今回は,英語史 (history of the English language) という分野が,19世紀以来,言語学やその周辺の学問領域の発展とともにどのように発展してきたか,そして今どのように発展し続けており,今後どのような方向へ向かって行くのかという,メタな問題について考えたい.参照したいのは,Momma and Matto により編まれた大部の英語史手引書の導入部である. 19世紀と20世紀初頭には言語学の関心は専ら音韻や形態の歴史的発達を厳密に探ることだった.比較言語学と呼ばれる専門的な領域が数々の優れた成果をあげ,近代言語学を強力に推し進めた時代である.英語史のような個別言語の歴史も必然的にその勢いに乗り,そこで記述されるべきは,英語の音韻や形態などが経てきた変化の跡であることが当然視されていた.現在いうところの英語の「内面史」 (internal history) である.M

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2016/06/17
    "英語史記述とは,常に,このような〔当該社会にとっての当該言語とは?といった〕問いに対して記述者が持論を開陳する機会" である
  • #2601. なぜ ''If I WERE a bird'' なのか?

    現代英文法の「仮定法過去」においては,条件の if 節のなかで動詞の過去形が用いられるのが規則である.その過去形とは,基的には直説法の過去形と同形のものを用いればよいが,1つだけ例外がある.標題のように主語が1人称単数が主語の場合,あるいは3人称単数の場合には,直説法で was を用いるところに,仮定法では were を用いなければならない(現代英語の口語においては was が用いられることもあるが,規範文法では were が規則である).これはなぜだろうか. もっとも簡単に答えるのであれば,それが古英語において接続法過去の1・3人称単数の屈折形だったからである(現代の「仮定法」に相当するものを古英語では「接続法」 (subjunctive) と呼ぶ). 昨日の記事「#2600. 古英語の be 動詞の屈折」 ([2016-06-09-1]) で掲げた古英語 bēon の屈折表で,Sub

  • #2579. 最初の英文法書 William Bullokar, ''Pamphlet for Grammar'' (1586)

    前 次 hellog英語史ブログ #2579. 最初の英文法書 William Bullokar, Pamphlet for Grammar (1586)[history_of_linguistics][latin][emode][bullokar] 英語史上初の英文法書は,William Bullokar (c. 1530--1609) による Pamphlet for Grammar (1586) である.同じ著者による完全な文法は Grammar at large として世に出たようだが,現在は失われており,その簡略版ともいえる Pamphlet のみが残っている.この小冊子は,序文に書かれているように「英語を素早く解析し,より易しく他言語の文法の知識に至るべく」作られたものである.Bullokar は綴字改革案を提示した人物としても知られるが,実際にこの小冊子も改訂綴字で書かれて

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2016/05/20
    "文法といえば,学問語として権威のあるラテン語独特の属性と思われていたので,ラテン文法と同じ術語で英語を処理してみせることによって,英語がラテン語と同格になったとしてよろこんだ"
  • #2553. 構造的メタファーと方向的メタファーの違い (2)

    昨日の記事 ([2016-04-22-1]) の続き.構造的メタファーはあるドメインの構造を類似的に別のドメインに移すものと理解してよいが,方向的メタファーは単純に類似性 (similarity) に基づいたドメインからドメインへの移転として捉えてよいだろうか.例えば, ・ MORE IS UP ・ HEALTH IS UP ・ CONTROL or POWER IS UP という一連の方向的メタファーは,互いに「上(下)」に関する類似性に基づいて成り立っているというよりは,「多いこと」「健康であること」「支配・権力をもっていること」が物理的・身体的な「上」と共起することにより成り立っていると考えることもできないだろうか.共起性とは隣接性 (contiguity) とも言い換えられるから,結局のところ方向的メタファーは「メタファー」 (metaphor) といいながらも,実は「メトニミー」

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2016/04/23
    "概念「メタファー」の議論として始まったにもかかわらず「メトニミー」が関与してくるあたり,両者の関係は一般に言われるほど相対するものではなく,相補うものととらえたほうがよいのかもしれない"
  • #2551. 概念メタファーの例をいくつか追加

    「#2548. 概念メタファー」 ([2016-04-18-1]) で,概念メタファー (conceptual_metaphor) として,"ARGUMENT IS WAR" の例を挙げた.今回は,英語の概念メタファーの例をいくつか追加したい.まずは,Lakoff and Johnson (7--8) より. TIME IS MONEY You're wasting my time. This gadget will save you hours. I don't have the time to give you. How do you spend your time these days? That flat tire cost me an hour. I've invested a lot of time in her. I don't have enough time to spa

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2016/04/21
    conduit metaphor: ""IDEAS (or MEANINGS) ARE OBJECTS", "LINGUISTIC EXPRESSIONS ARE CONTAINERS" "COMMUNICATION IS SENDING" という3つの関連する構造的な概念メタファーを合わせたもの"/メタファーだとわかれば表現の感覚がすっと腑に落ちるね
  • #2528. ''evolution'' の evolution (2)

    昨日の記事 ([2016-03-28-1]) に引き続き,言語変化論における evolution の解釈について.今回は evolution の目的論 (teleology) 的な含意をもつ第2の語義,"A series of related changes in a certain direction" に注目したい.昨日扱った語義 (1) と今回の語義 (2) は言語変化の方向性を前提とする点において共通しているが,(1) が人類史レベルの壮大にして長期的な価値観を伴った方向性に関係するのに対して,(2) は価値観は廃するものの,言語変化には中期的には運命づけられた方向づけがあると主張する. 端的にいえば,目的論とは "effects precede (in time) their final causes" という発想である (qtd. in McMahon 325 from p.

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2016/03/29
    形而上学だけでなく科学的な説明においても目的論が問題になるのね
  • #2517. 古典語とは何か?

    英語史をはじめ歴史言語学や言語史を学んでいると,しばしば古典語 (classical language) という用語に出くわす.古典語の典型的な例は,西洋(史)の古典文化や古典時代と結びつけられる言語としてのラテン語 (Latin) や古典ギリシア語 (Ancient Greek) である.古典語は現代語 (modern language) と対立するものであり,そこから「古典語=死んだ言語 (dead language)」という等式が連想されそうだが,それほど単純なものではない (cf. 「#645. 死語と廃語」 ([2011-02-01-1])) .古典語の属性としては,活力 (vitality) のほか,自律性 (autonomy) と標準性 (standardisation) も肝要である (see 「#1522. autonomy と heteronomy」 ([2013-06

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2016/03/19
    古典語=vitality を失っていることにくわえ ”自律性 (autonomy) と標準性 (standardisation) ” をもつ言語。これに "歴史的な権威 (historical authority) を明示的に加えてもよいのではないか" とのこと
  • #2109. 鳥の歌とヒトの言語の類似性

    ヒトの言語の特徴について,「#1327. ヒトの言語に共通する7つの性質」 ([2012-12-14-1]) や「#1281. 口笛言語」 ([2012-10-29-1]) などの記事で取り上げてきた.そのような議論では,当然ながらヒトの言語が他の動物のもつコミュニケーション手段とは異なる特徴を有することが強調されるのだが,別の観点からみるとむしろ共通する特徴が浮き彫りになることがある.Aitchison (7--9) によれば,ヒトの言語と鳥の歌 (bird-song) には類似点があるという. (1) まず,すぐに思い浮かぶのはオウムによる口まねだろう.オウムはヒトと同じような意味で「しゃべっている」あるいは「言語を用いている」わけではないし,調音の方法もまるで異なる.しかし,動物界には希少な分節音を発する能力をもっている点では,オウムはヒトと同類だ. (2) 鳥は先天的な呼び声 (c

  • #2471. なぜ言語系統図は逆茂木型なのか

    言語系統図に限らないが,いわゆる系統図では,過去のものが上方に描かれ,そこから現在に向かって枝が下へ降りてくるのが通例である.写の系統図 (stemma),文法の構造木,生物の系統図,家系図など,いずれもこの方向だ.別名,樹形図とも呼ばれ,木になぞらえられるわりには,それは逆茂木なのである.多くの人はそれに見慣れているが,よく考えてみるとなぜそうなのかという疑問が生じる.試みに「#1339. インドヨーロッパ語族の系統図(上下反転版)」 ([2012-12-26-1]) で通常の印欧語族の系統図を上下反転させたものを提示してみたが,見慣れないと変な感じがする. 認知言語学でいわれる概念メタファー (conceptual metaphor) によれば,通言語的によく観察される認知パターンの1つに "EARLIER IS UP" がある.日語で「過去にさかのぼる」「時代をくだる」というよう

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2016/02/05
    "EARLIER IS UP" の概念メタファー
  • #2445. ボアズによる言語の無意識性と恣意性

    Sebeok, Thomas A., ed. Portraits of Linguists. 2 vols. Bloomington, Indiana UP, 1966 を抄訳した樋口より,アメリカ言語学者 Franz Boas (1858--1942) について紹介した文章を読んでいる.そこで議論されている言語における範疇 (category) の無意識性の問題に関心をもった.樋口 (83--85) から引用する. ボアズは Handbook of American Indian Languages (1991年)のすばらしい序論において、次のように述べている「言語学がこの点で持っている大いなる利点は次のような事実である。すなわち設定されている範疇は常に意識されず、そしてそのためにその範疇が形成される過程は、誤解を招いたり障害となったりするような二次的説明をしないで辿ることが出来る。な

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2016/01/06
    歴史やなんかの語りは話者の立場・意図によって変えられうるけど,文法なんかはそうじゃなく,そこに織り込まれた慣習を発見すればある種の心性が見出だせる,と
  • #2417. 文字の保守性と秘匿性

    文字を利用する書き言葉という媒体は,話し言葉に対して保守的である.このことは,これまでの文字や書き言葉に関する記事において前提としてきた.これについては,例えば「#15. Bernard Shaw が言ったかどうかは "ghotiy" ?」 ([2009-05-13-1]),「#753. なぜ宗教の言語は古めかしいか」 ([2011-05-20-1]),「#2292. 綴字と発音はロープでつながれた2艘のボート」 ([2015-08-06-1]),「#2405. 綴字と発音の乖離 --- 英語綴字の不規則性の種類と歴史的要因の整理」 ([2015-11-27-1]) を参照されたい. 文字には,保守性に加えて,特に古代においては秘匿性があった.文字の読み書き能力は,特権階級にのみ習得の認められた秘密の技能であり,それは権力や威信の保持にもあずかって大きかった.また,世俗的な権力と宗教的な威

  • #2366. なぜ英語人名の順序は「名+姓」なのか

    標題は「姓+名」の語順を当然視している日語母語話者にとって,しごく素朴な疑問である.日語では「鈴木一郎」,英語では John Smith となるのはなぜだろうか. 端的にいえば,両言語における修飾語句と被修飾語句の語順配列の差異が,その理由である.最も単純な「形容詞+名詞」という語順に関しては日英語で共通しているが,修飾する部分が句や節など長いものになると,日語では「修飾語句+被修飾語句」となるのに対して,英語では前置詞句や関係詞句の例を思い浮かべればわかるように「被修飾語句+修飾語句」の語順となる.「鈴木家の一郎」は日語では「鈴木(の)一郎」と約められるが,「スミス家のジョン」を英語で約めようとすると John (of) Smith となる.だが,「の」であれば,*Smith's John のように所有格(古くは属格)を用いれば,日語風に「修飾語句+被修飾語句」とする手段もあっ

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2015/10/22
    英語の姓は "メトニミーの原理で地名や職業名" などを前置詞句の修飾句として後ろにつけたので名+姓になったという話
  • #2349. 英語の復権期にフランス借用語が爆発したのはなぜか (2)

    前 次 hellog英語史ブログ #2349. 英語の復権期にフランス借用語が爆発したのはなぜか (2)[reestablishment_of_english][language_shift][french][loan_word][borrowing][bilingualism][borrowing][lexicology][statistics][contact] 標記の問題については,以下の一連の記事などで取り上げてきた. ・ 「#117. フランス借用語の年代別分布」 ([2009-08-22-1]) ・ 「#1205. 英語の復権期にフランス借用語が爆発したのはなぜか」 ([2012-08-14-1]) ・ 「#1209. 1250年を境とするフランス借用語の区分」 ([2012-08-18-1]) ・ 「#1540. 中英語期における言語交替」 ([2013-07-15-1])

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2015/10/03
    "政治や法律に関わる用語の多くは,これまでフランス単語でまかなってきたのであり,対応する英単語は欠けていた[……]写字生が書き言葉を英語へとシフトする際に,書き慣れたフランス語の用語を多用したことは自然"
  • #2342. 学問名につく -''ic'' と -''ics''

    学問名には,acoustics, aesthetics, bionomics, conics, dynamics, economics, electronics, ethics, genetics, linguistics, mathematics, metaphysics, optics, phonetics, physics, politics, statics, statistics, tectonics のように接尾辞 -ics のつくものが圧倒的に多いが,-ic で終わる arithmetic, logic, magic, music, rhetoric のような例も少数ある.近年,dialectic(s), dogmatic(s), ethic(s), metaphysic(s), physic(s), static(s) など,従来の -ics に対して,ドイツ語やフランス語

  • #2341. 表意文字と表語文字

    文字の種類と類型について,「#422. 文字の種類」 ([2010-06-23-1]) や「#1822. 文字の系統」 ([2014-04-23-1]) などで考えてきた.文字論の入門的な文献でも,標題に掲げた表意文字 (ideogram) と表語文字 (logogram) は必ず触れられるものの,両者の違いの説明となると,たいてい歯切れが悪い.しばしば両者が混同され同一視されることもあるように,両者のあいだにいかなる違いがあるのかを明確に理解している人は必ずしも多くない.誤解がはびこっていることは,Bloomfield (285) の次の指摘からも知られる.来の表語文字のことを「表意文字」と理解している向きが多いようだ. Systems of writing which use a symbol for each word of the spoken utterance, are kn

  • #2321. 綴字標準化の緩慢な潮流

    英語の綴字の標準化の潮流は,その端緒が見られる後期中英語から,初期近代英語を経て,1755年の Johnson の Dictionary 出版に至るまで,長々と続いた.中英語におけるフランス語使用の衰退という現象も同様だが,このように数世紀にわたって緩慢と続く歴史的過程というのは,どうも理解しにくい.15世紀ではどの段階なのか,17世紀ではどの辺りかなど,直感的にとらえることが難しいからだ. 私の理解は次の通りだ.14世紀後半,Chaucer の時代辺りに書き言葉標準の芽生えがみられた.15世紀に標準化の流れが緩やかに進んだが,世紀後半の印刷術の導入は,必ずしも一般に信じられているほど劇的に綴字の標準化を推進したわけではない.続く16世紀にかけても,標準化への潮流は緩やかにみられたが,それほど著しい「もがき」は感じられない.しかし,17世紀に入ると,印刷業者というよりはむしろ正音学者や教師

    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2015/09/04
    14世紀後半から18世紀半ばにまでかけて段階的に進んだと