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ブックマーク / note.com/tamakisaito (3)

  • 「意思疎通できない殺人鬼」はどこにいるのか?|斎藤環(精神科医)

    7月19日に公開された藤本タツキ漫画「ルックバック」は傑作だった。CSM以来の藤ファンとしては、この作家の底知れない引き出しの多さに驚愕したし、予告されているCSM第二部への期待感がいやがうえにも高まった。とはいえ、私は自分がこの作品のほんとうの素晴らしさを理解できているとは思わない。作は「漫画家についての漫画」であると同時に、これまでになく藤の個人史を投影したとおぼしい作品だ。それゆえ、実際に漫画制作に関わった経験のある人ほど、その素晴らしさを深く理解できるであろう。 私は特に物語後半の「じゃあ藤野ちゃんはなんで描いてるの?」という問いかけに続く無音のシークエンスがことのほか好きで、そこだけ何度も読み返している。藤野のネームを読んだ京のうれしそうな笑顔、涙ぐむ京にティッシュを渡す藤野、ただ京を喜ばせたかった、という想いが画面全体から溢れ出してくる。藤作品は良く映画的、と言

    「意思疎通できない殺人鬼」はどこにいるのか?|斎藤環(精神科医)
  • ひきこもり報道に希望すること|斎藤環(精神科医)

    以下は、「薬物報道ガイドライン」を参考に、ひきこもり報道に「こうあってほしい」と望むことをまとめたテキストです。 【望ましいこと】 ・ひきこもりの当事者や家族、支援者などが、報道から強い影響を受けることを意識する ・ひきこもりは個人の要因のみならず、家族や社会などの複数の要因が複雑に絡み合って起こる「現象」であるという視点 ・ひきこもりの「異常さ」よりも「まともさ」に焦点をあてていく姿勢 ・社会的に排除され、孤立している当事者の苦しみや困難に寄り添う姿勢 ・支援としては、医療機関のみではなく、ひきこもり地域支援センターをはじめ、さまざまな公的相談機関、居場所、自助グループ、家族会などがあることを知らせ、時間はかかっても「リカバリー」は可能であると伝えること ・リカバリーはすなわち就労ではない。当事者が主体性や自己肯定感を回復していく過程のことである。リカバリーにおける居場所や対話の重要性を

    ひきこもり報道に希望すること|斎藤環(精神科医)
  • コロナ・ピューリタニズムの懸念|斎藤環(精神科医)

    疫病は倫理観を書き換える。14世紀にヨーロッパの人口の約30%(地域によっては80%)を死亡せしめたペスト(黒死病)は人々の死生観に影響を及ぼし、「メメント・モリ(死を思え)」なる標語を生んだ。一方、18世紀におけるイギリスでのペストの流行は、故郷に疎開して思索に集中できたアイザック・ニュートンに万有引力の着想をはじめとする「三大業績」をもたらした。15世紀から16世紀初頭にかけて急速にヨーロッパに広まった梅毒は、イギリス人の意識と社会的身ぶりとを変え、ピューリタニズムをもたらしたという説がある。 20世紀末から流行したHIVは、当初は罹患者の特徴から、同性愛やドラッグカルチャーに対する神罰、といったニュアンスでとらえられた。粘膜を介しての血液の交換が危険であると理解されてからは、避妊のためではなく、いわば「粘膜への禁欲」としてコンドームの使用が大々的に推奨された。 そして現在、新型コロナ

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