※本稿には『劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME』『心が叫びたがってるんだ。』『さよならの朝に約束の花をかざろう』『空の青さを知る人よ』『泣きたい私は猫をかぶる』『アリスとテレスのまぼろし工場』『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』(文藝春秋)のネタバレがあります。ご注意ください。 「商業原則と私的な物語の両立」の系譜 日本のアニメの歴史の中には、お客さんが喜ぶような商業原則に沿った内容を提供しつつ、そこに私的な物語を紛れ込ませる作家の系譜がある。たとえば、宮﨑駿は、『紅の豚』に、自分自身とスタジオジブリのあり方を投影した。庵野秀明は、『新世紀エヴァンゲリオン』で美少女とロボットを用いたアニメの中に、私的な実存を投影した。 これは、かつてはロマンポルノや、Vシネなどで行われていたことと、よく似ている。たとえばロマンポルノでは、セックスシーンをある一定の時