遠山啓が、かけ算を累加として教えないとしたらどう教えるべきかを考えて答えを見つけたときの記述があった。(遠山啓『著作集』の『数学教育論シリーズ2』「かけ算」201頁、初出は『数学セミナー』1975年11月号) 「小数・分数の乗除を教えないことにすれば話は別だが、意味の一貫性を保ちながら教えるとしたら、どうしたらいいか。答えは一つしかない。それは、第2学年の出発のときから乗法を累加としてではなく定義しておくことである。だが、そんなことは可能なのか。私は可能だと思う。それは、 1当たり量×分量 として乗法を定義することである。たとえば、「ウサギは1匹当たり耳を2つもっている。3匹分の耳の数はいくらか」という問題のとき、 2×3 という乗法を考えるのである。このような定義には加法は少しもはいってこない。しかも、意味は明瞭である。もちろん、答えを出すとき、 2+2+2=6 という加法を使うことはい